はじめのマイオピニオン - my opinion -
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リーガルマインドを常に

 NHK連続朝ドラ『虎に翼』が先日、半年間の放映を終えた。戦前の初の女性弁護士・三淵嘉子さんをモデルとしたドラマで、女性弁護士誕生の苦労、日本国憲法制定、家庭裁判所の誕生、原爆裁判、尊属殺制度など、法律に関する重要なターニングポイントを捉えて、小気味よく見事に描写した、久しぶりのヒット作品だった。

 私は半年前、国会に設置されている弾劾裁判所の裁判長として、SNSを通じて犯罪被害者家族を苦しめた裁判官を罷免する判決を下した。その直後からこの番組が始まったため、自然に引き込まれていった。法曹資格もないのになぜ裁判長なのか疑問に思われる方も多いが、そもそもこの制度は立法府が司法府をチェックする唯一の機関であり、その裁判長や裁判員は国会議員が務めるという仕組みなのだ。

 今回の裁判は判決までに1年4ヶ月かかり、都合16回も公判を開いた。戦後の弾劾裁判の中でも最多公判回数、最長審議期間となった。なぜかというと今回の被訴追者(被告)が刑事罰を受けていないためだ。過去の例ではほとんどが刑事罰を受けており、弾劾裁判ではその結果をなぞれば良かった。今回は証拠調べから各種尋問に至るまで、フルサイズの裁判手続きを経なければならなかった。

 またSNSを通じた裁判官の非行をどう解釈するかでも意見の相違があったが、繰り返し非行を続けることが、被害者家族に深刻な精神的苦痛を与えたと認定し、「著しい非行」に該当するとして、3分の2以上の賛成により罷免という結論に達した。この結果、被訴追人は退職金の支給もなく、今後5年間法曹資格を失うことになる。

 この度の経験により人を裁くことの難しさ、物事をあらゆる角度から見ること、検証することの大切さを思い知った。先日の袴田事件の再審無罪に至る何十年という歳月と議論の積み重ねも、まさに人を裁くことの難しさを如実に表している。「虎翼」は終わったが、常日頃からリーガルマインドを持つことを心がけていきたい。

[ 2024.09.30 ]
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2024.09.16
PTAの将来