はじめのマイオピニオン - my opinion -
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【全日制高校と通信制高校について】

 全日制高校と通信制高校との相違が、最近曖昧になってきた感がある。

 全日制高校は基本的に月曜日から金曜日まで、1日6時間から7時間の対面授業があり、この時間を3年間履修し、一定以上の成績と出席日数をクリアして、初めて高校卒業が認められる。一方、通信制高校は郵送やネットによって提供される教材により、生徒が自由な時間で学習してレポートを提出するとともに、概ね週1回から月1回、さらには半年に1回程度の違いはあるが、スクーリングにおいて担当教員が指導し、一定の単位を習得した生徒を高校卒業とする。

 以上のような学習のあり方を概括すると、全日制は対面授業による「履修主義」を基本とし、通信制は対面によらない「習得主義」を基本とする点で大きな違いがある。これまで文部科学省は全日制高校による教育をスタンダードとし、通信制高校による教育をその補完とする考え方を基本としてきた。身体的や精神的な理由で全日制に通えない生徒、不登校や学習遅滞により全日制に適応出来ない生徒などが通信制高校に通い、高校卒業の資格を習得する道を確保してきた。教育の形態が様々に存在し、個々人のニーズや環境に合った教育を選択出来るという状況は、もちろん私も否定してはいない。

 ところが最近の文部科学省は通信制高校、あるいは広域通信制高校の活用を促すようなスタンスになっている。「学びの多様性」「多様な学び方」さらには「学習の個別最適化」という教育の目的を達成するためには、通信制高校の方が相応しく、全日制高校の存在を蔑ろにしてしまったように感じる。その背景には、経済産業省が主導しているEdTechの普及や、コロナ禍の中で実施されたオンライン授業の評価などに引っ張られた可能性がある。

 さらに通信制高校側が様々なメディアを使って広告宣伝をする際、全日制高校であろうと通信制高校であろうと、「高校卒業という資格は全く同じである」と盛んに述べているが、文部科学省はこれをそのまま放置している。高校の卒業証書に「全日制課程を修了」か「通信制課程を修了」を記載する必要性は求められていないが、その結果、益々両者の垣根はさらに低くなってしまった。

 もし文部科学省がこのような事態を漫然と見過ごし、全日制、通信制の垣根を無くしてしまえば、近い将来には全日制高校という手間のかかるところに行くよりは、通信制高校という手間のかからないところに行く生徒がどんどん増えることになる。

 公立・私立を問わず、全日制高校という規律ある教育実践をしてきた、長年の私たちの努力は何だったのか、忸怩たる思いになる。もちろん全日制高校の様々な魅力を磨き、発信してくることにやや無頓着だったことは反省しなければならないが、「易きにつく」生徒が増えることにより、我が国の将来は本当に良くなるのだろうか。

[ 2024.07.15 ]
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