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トランプ大統領にNOと言える日本

 かつて石原慎太郎氏とソニーの盛田昭夫氏(いずれも故人)は、1989年に『NOと言える日本』を出版してベストセラーとなった。当時の日米間の貿易摩擦をとらえて、高飛車に出てくるアメリカの対応に物申す態度を示すべきであるとして、日本人のアイデンティティをくすぐったヒット作になった。

 それから30数年、1期目で既に世界に旋風を巻き起こした米トランプ大統領が返り咲いた。本年1月21日に就任してから、大統領令を次々に署名、発効した。バイデン前政権時に発出した大統領令の8割方を廃止したほか、MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)に資する政策を矢継ぎ早に打ち出した。

 例えばデンマークが所有するグリーンランドの購入や、パナマ運河の所有、メキシコ湾のアメリカ湾への名称変更、カナダやメキシコ、中国に対する高率関税適用など、アメリカ第一主義を根拠とした一方的な措置を宣言した。ただしその後トランプ大統領は、カナダとメキシコとの交渉により、追加関税を1ヶ月遅らせることとした。よく言えば「ディール(取り引き)」悪く言えば「脅し」の手法である。

 さらにトランプ大統領は、ガザ地区を廃墟にした人道上の罪で、ネタニヤフ首相に逮捕状を発出したICC(国際刑事裁判所)職員に制裁を課すことや、ガザ地区をアメリカが所有し、パレスチナ人を他の場所に移住させる構想、さらにはWHOやパリ協定からの離脱。アメリカ国内にあっては、国際協力の要であるUSAID(米国際開発局)の縮小ないし廃止、教育省の解体、トランスジェンダーのアスリートを国際大会から締め出すなど、命令を打ち出した。

 このように国際協力、地球温暖化対策、人権問題、民族自決主義、人種差別撤廃や多様化からの脱却、教育や福祉の軽視など、これまで世界の人々が築き上げてきた財産や制度を、尽く葬り去ろうとする暴挙としか思えない。しかも一期の時よりもさらにひどい状況である。国際社会はもちろん、日本政府も毅然として「NOと言える」対応をすべき時である。

 一方で石破総理との首脳会談では、心配されたトランプの暴走はなかったようで、ホッとしている。同盟国としての繋がりを再確認できたことはひとまず安心材料だ。しかしだからと言って遠慮して、ものが言えないのでは困る。初対面でもあり、まずは信頼関係の醸成が急務だが、今後は「間違いは間違いだ」とはっきり物が言える日本であるべきだ。

[ 2025.02.10 ]
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