はじめのマイオピニオン - my opinion -
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ゴーン・ショックを乗り切れるか?

 日産のカルロス・ゴーン会長は「カリスマ経営者」として、日本人の尊敬の的だった。90年代危機に瀕していた日産自動車を驚異にV字回復させたからである。その後も社内を強いリーダーシップで引っ張ってきた感がある。

 しかしその同じ人間が、役員報酬を50億円も過少に証券報告書に申告し、金融商品取引法違反に問われることになった。「寝耳に水」とはこのことかと、俄かには信じられないニュースだった。捜査当局によると、ベンチャー投資と言われた資金も個人の住宅購入に回され、業務上横領や特別背任も視野に入れているという。

 私の選挙区の上三川町には、日産の国内主力工場が操業している。シーマやフーガ、スカイラインなど高級車を主に製造し、多くは北米向けに輸出されている。5000人を超える従業員が働き、下請けも数多く集積している。言わば日産「城下町」である。つい先日も日産栃木工場の操業50周年を祝ったばかりだった。

 事件発覚後上三川町長にお会いしたが、戸惑いは隠せない様子である。「日産のブランドが落ちる」あるいはその影響で「売れ行きが落ちるのではないか」、さらには「将来の雇用は大丈夫か」などと心配は尽きない。まさに町の存亡にも関わることなのだ。

 さらに心配なのは、ルノー社との資本提携の関係が今後どうなるかである。現在は日産がルノー株を15%、ルノーが日産株を44%持ち、これに三菱自動車が絡む構図である。提携当初は日産の力が弱かったために、このようにアンバランスな持ち合い比率になっていた。しかし日今や日産の方が稼ぎ頭であり、比率見直しが喫緊の課題だ。

 一方のルノー社は、この持ち株比率を利用して発言権を確保し、ルノー主導の経営統合を画策してきた。その動きをこれまで止めてきたのはゴーン会長の存在だったので、今後ルノーがより積極的に日産や三菱の経営に口出ししてくる可能性は大きい。

 最新の報道では、今回のゴーン解任劇は日産によるクーデターではないかという陰謀説がフランス国内に出始めている。その背景には、ルノー社はほとんど国営企業と言っても過言でなく、フランス国民にとっては自分たちの会社という意識がある。ゴーン前会長は国民の誇りであり、また日産を立て直した英雄であり、彼を追い落としたことは「恩知らず」という考えだ。

 今後の日仏関係に暗雲が漂いかねない 状況だが、ゴーン前会長の一連の不正は、日産本社が周到に内定を続け、自信を持って発表した結果である。フランス政府側には、この事実を確かな証拠とともに説明し、早急に国家間で話し合う必要がある。さらに今後の両社の関係を、双方の国益に叶う形で、再構築すべきである。

[ 2018.11.26 ]