はじめのマイオピニオン - my opinion -
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広電とLRT

 令和7年8月6日には、広島に原爆が落ちてから80年の節目を迎えた。平和記念式典をはじめ関連する行事が、広島を中心に各地で開催された。9日にはそれが長崎に移っていく。

 かつてこの時期に、広島市内を縦横に走っている広島電鉄の路面電車が、被爆して真っ暗に焼けこげた姿を露呈していた一方で、被爆から3日後には、一部で走りはじめたことがドラマ仕立てのドキュメントで放映された。この奇跡的な復活の姿に、被爆した多くの市民が勇気付けられたことは想像に難くない。

 この奇跡は「広電魂」とも言える鉄道会社の心意気によって実現したものだが、その伝統を受け継いだ人物が、宇都宮のLRT建設に力を貸してくれた。ライトレール株式会社の元常務・中尾正俊さんである。

 中尾さんは長く広島電鉄の運行部門で活躍し、定年を迎えつつあったが、遠く離れた宇都宮市で全線新線によるLRT(新型路面電車)の建設計画を知り、広電の経験を生かせないだろうかと、10年前に宇都宮に来てくれた。

 その後の中尾さんの活躍は、関係者の誰もが認めるところであり、初めてのLRTの建設から運行システムの開発まで、まさに「広電魂」を遺憾なく発揮し、数々の困難を乗り越えて、完成、開業に漕ぎつけることができた。感謝しても仕切れない。

 この8月には開業2周年を待たず、延べ乗客数1,000万人に達しようとしている。これからは宇都宮駅の西側に延伸する計画を実行に移す段階だ。東側が成功したからといって、西側がスムーズにいくとは限らない。難工事も抱えている。

 中尾元常務には、まもなくふるさとの広島に戻って余生を過ごされると聞く。しかしこれまで不屈の精神で頑張ってこられた元常務を、関係者皆が見習って行けば、必ずや道は開けると信じる。

 中尾さん、本当にお疲れ様でした。これからもどうか温かくも厳しい目で、宇都宮LRTを見守っていただきたい。

[ 2025.08.11 ]
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