9月7日に始まった自民党総裁選挙は、この20日で結果が出た。大方の予想通り安倍現総裁が3選を果たしたが、石破候補も党員票で善戦し、一定の批判票を集めた形となった。安倍総裁は引き続き総理大臣として政権運営を担うが、これらの批判票をどう受け止め、どう改善していくかを示すとともに、国民の声にしっかり耳を傾け、謙虚な姿勢で取り組んでいただきたい。
今回の総裁選で私は、かつて盟友だった石破候補を応援することが出来なかった。政策的には共感する点も多かったのだが、所属していた平成研究会を退会する際、何の説明もなしに仲間数名を連れて出て行ってしまわれた。このような行為に対して、残念ながら今でも私は許せない気持ちを捨てきれていない。
一方の安倍候補だが、今やドイツのメルケル首相以上に外交の顔となっており、暴れ馬・トランプ大統領との交渉、中国や北朝鮮とのシビアな首脳会談などを考えると、安倍候補を置いて他にいないだろう。またアベノミクスを修正する必要はあるものの、局面を大きく変えることはリスクを伴うこととなり、トップを替える選択肢は取りにくい。
しかし安倍総理続投に際しては、改めていただきたいことがいくつかある。
第一は森友問題・加計問題の背景にある、官僚の「大いなる忖度」の改善だ。内閣人事局の強化により、政治のリーダーシップが強まること自体は悪いことではないが、あまり強すぎると官僚は官邸を見ながら仕事をするようになる。綱紀粛正とともに、官僚が国民を見て仕事をするようにしてほしい。
第二は自民党内で意見が自由に言える環境を作るべきである。かつて存在した派閥争いはデメリットが大きかったが、総裁派閥が替わる度に「擬似政権交代」が行われ、党内の風通しも良くなるというメリットもあった。現在の「一強多弱」という構図はそのメリットが生かせず、また党内の不満を溜め込むという脆さを助長してしまう。かつての自民党にあったような、自由闊達な議論を復活させ、多様性を認める状況を少しでも作り出してほしい。
第三は憲法改正をめぐる一連の発言である。解釈改憲を繰り返してようやく認められた自衛隊を、憲法の中に明記することは、戦後生まれの我々の責任であり、この点においては安倍総理とは同じ考えだ。しかしその手法となると、安倍総理はトップダウン、そして自民党主導。私は各党との話し合いを経て、幅広い合意を得るというボトムアップ型。どちらが上手くいくかは分からないが、少なくとも総理が憲法の発言をすると憲法審査会の現場は直ぐ止まってしまう。この件に関しては総理の発言はできる限り抑制的であることが望まれる。
このような観点から安倍候補の発言を注視してきたが、残念ながら抽象論に終始し、改善の具体策が示されなかった。このため私は安倍候補に投票することが出来ず、やむなく白紙で投票した。いずれの候補者にも投票できなかったことは、私の不徳の致すところであり、支持していただいている皆様に申し訳ない気持ちで一杯である。しかし一方、選択肢が極めて限られていたことも事実であり、このような現状は自民党にとって大きな危機だと言っても過言ではないだろう。
今後の統一地方選挙や参議院選挙は、とても厳しい現実が待ち構えているに違いない。安倍政権は自民党内の風通しをよくしていただき、国民の声にしっかり耳を傾けた政権運営を心がけてほしいと、心から願ってやまない。