安倍長期政権が続く中、昨年突如として森友問題が発覚した。新たな私立小学校建設のための国有地の払い下げにおいて、常識を超える値引きが行われていた。また貸与から払い下げに至るまでの手続きが通常よりもかなり早く進められた。
以前、私立大学設置のための国有地払い下げに関わった私自身の経験から、今回の事案が如何に異常であるかを、昨年このオピニオンで指摘したところだが、その異常さは、この度の財務省理財局と近畿財務局による公文書の書き換えという、驚くべき事実によって裏付けられた。
「それ見たことか」と言いたい気持ちもなくはないが、それ以上に「官庁の中の官庁」「日本の官僚の鏡」とも言われた財務省のお粗末さは、長年大蔵省、財務省を見て、一定の尊敬の念を抱いてきた私には、大きなショックである。同時にこれは官僚側の問題だけでなく、政治との関わりの中で発生したこと。さらには官僚側の政治権力に対する、大いなる忖度の結果であり、政治家の1人として猛省しなければならない。
野党はここが攻め所と思い、徹底的に糾弾を続けているが、彼らに任せるだけでなく、政府を作り出している与党の立場でも、率先して事実関係の究明を行うなんらかの組織を作るべきではないか。また今回の事案に関わった政治家やその周辺は、国会の中だろうと外だろうと、自ら進んで真実を明らかにすべきである。「責任をとって辞めろ」と言うのは簡単だが、本当の責任の取り方は、事実関係を徹底的に明らかにしたのち、自ら退くことではないか。
さらに必要なことは、今後二度と同様の事態を起こさないため、抜本的な改善策を模索すべきことだ。安定政権は望ましいことだが、首相官邸に力が集中しすぎると官僚も政治家も官邸を見ながら仕事をしてしまう。また小選挙区制のお陰で、少なくとも自民党は権限が本部に集まりやすい。このような状況では、トップに立つものの心がけに頼るだけでなく、なんらかのチェック機関が必要ではないか。
もう一つの改善策は、政府の人事制度である。各省事務次官や局長クラスの人事については、数年前から内閣人事局長がチェックすることとなった。当初の計画では「事務の」内閣官房副長官が務めるはずだったが、政治主導を掲げて、実際は「政務の」官房副長官が務めることになった。
これまで歴代の人事局長は、幸いにも公平で穏健な方々だったが、制度上政務の副長官が担当することは、官邸が幹部官僚の人事を握ることと同義だ。益々官僚が官邸を見ながら仕事をせざるを得ない。この制度的欠陥は改めなければならない。