民法改正案がまもなく国会に提出される運びになった。民法というと比較的地味な印象があるが、今回は成年年齢、即ち大人の年齢をこれまでの20歳から18歳に引き下げるという、話題性のある改正案の内容である。
18歳が遡上に上がったのは、今から10年前に憲法改正国民投票法を検討したのが始まりである。世界の9割近くが既に選挙権を18歳から与えており、我が国もそれに合わせるべきこと。また人口減少を迎える我が国としては、若い人々に社会の一員として立派に行動してもらいたいとの思いを込めて、投票権年齢を18歳にした。
その後国民投票が18歳からなら、選挙権も18歳からに揃えるのが妥当であり、さらに選挙権を行使できるのであればそれは立派な大人であるとして、成年年齢の引き下げが方向付けられた。当初の国民投票法の提案者としては、今回の民法改正案取りまとめにも、強く責任を感じて深く関与してきた。
大人の年齢を18歳に引き下げるにしたがって、年齢表記を調整しなければならない数十本の法律改正や、お酒や煙草、ギャンブルなどは20歳のままに据え置くという政治判断を行なった。1人で契約できる年齢が下がることによって、消費者被害が低年齢化することを避けるため、契約を取り消せる要件を拡大したほか消費者教育、主権者教育を充実させる計画を策定した。
しかしここで大きな問題が残っている。それが成人式のあり方である。現在は20歳を迎える年度の成人の日前後に、各自治体が主催して華やかに成人式が開かれる。既に大学生や専門学校生、また社会人として、やや落ち着いた環境のもとで若者はこれに参加できる。
ところが18歳を成人とすると、成人式を高校3年生の卒業間近かで迎えることとなり、センター試験や大学入学試験にまともに引っかかる。成人式どころではないような心境だろう。また施行が予定される4年後には、20歳、19歳、18歳の3年代がまとまって成人式を迎えることとなり、従来の会場がパンクすることは目に見えている。
さらには高校生だから成人式は制服が主流で、晴れ着を着ることは少ないかもしれない。呉服屋さんや着付けの方など、きもの業界の皆さんは成人式が掻き入れ時なので、「どうしてくれる!」とねじ込まれること必定である。
これまでも冬の厳しいところでは、1月ではなく、お盆の頃に成人式を行う自治体も少なくないが、やはり主流は1月である。やり方については、各自治体に任せれば良いではないかと放任する考えもあるが、文部科学省や総務省では何らかの指針やモデルを提示する必要性を唱える向きもある。成人の日自体をずらすというアイデアもないではない。
何れにしても大人としての自覚を促す、成人式という大切なイニシエーションを、意義ある形として残すために、私が座長を務める「自民党若年成人の教育・育成に関する特命委員会」で、そのあり方について精力的に議論して行きたい。