2年前のパリで気候変動枠組条約締約国会議COP21が開催され、画期的な合意がなされた。加盟各国が温暖化ガスの代表であるCO2排出量を、将来どのくらい削減するかを表明し、自国の責任においてその実現を約束するという仕掛けだ。
我が国も、2030年には2013年比で26%削減することを約束した。これを実現するためには、さらなる省エネ化や再生可能エネルギーの普及拡大、新規制基準を満たした原発の必要最小限の再稼働など、多くの課題が山積する。企業分野のみならず、市民生活の中でも削減の努力が不可欠である。
ところが今年6月には、パリ協定からの離脱を仄めかしていたトランプ政権が、本当に離脱を宣言してしまった。全世界の排出量の16%を占めるアメリカの離脱は、その割合に留まらず、パリ協定の実効性を揺るがしかねない影響を与えている。幸い世界の28%を占める中国など同調する国はまだ出てきていないが、加盟各国の意欲に水を差す行為である。
そのアメリカでは今年9月に、カリブ海で最強のハリケーンと言われる「ハービー」と「イルマ」がフロリダなどを相次いで襲い、千年に一度という大洪水をもたらした。12年前にニューオーリンズを襲い、我々の記憶にも残っている「カトリーナ」より、さらに気圧が低かったと言われている。日本でも10月に上陸した台風21号は、上陸時点での気圧が925hPaという最低気圧を更新している。
このように地球温暖化の影響は、確実に台風やハリケーンの強さを増加させ、30年に一度と言われる異常気象を毎年のように発生させ、被害を拡大しているのだ。パリ協定の目標は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前より2℃以内に抑えることであり、これを超えると未曾有の被害がもたらされる。
地球の直径は13000kmであるのに対して、大気の厚さはせいぜい10kmである。これを直径13cmのリンゴに例えると、大気の厚さは0.1mmであり、リンゴの皮よりも薄いものである。無尽蔵と思われる大気も、実はとても限られた存在であることが分かる。
このように「自然環境は有限である」という概念を広めるためには、環境教育が極めて重要であることは論を待たない。取り分けトランプ大統領には1日も早く学んでいただきたいものだ。