ここ数日の報道では、シリアやイラクの一部を支配下に置いていたIS(イスラミック・ステート)が、崩壊直前にあると言う。2014年にイラクのモスルで、イスラム過激派武装集団の指導者、アブバクル・バグダディ容疑者が建国を宣言してから3年近く、アメリカ、ロシアをはじめとする有志連合60ヶ国との間で激しい戦闘が繰り返されてきた。
既に、ISの首都とも称されるシリアのラッカが陥落し、バグダディ容疑者の死亡説まで流れる中、有志連合は彼らの象徴的な拠点であるモスルを、間もなく制圧する見込みだという。この数年パリ、ニース、ロンドン、マンチェスター、ブラッセル、ベルリンなどの主要都市で相次いだ、過激派テロに関与してきたISが崩壊することは、世界にとってこれほど有難いことはない。
しかしながらISの過激思想に影響され、ジハード(聖戦)貫徹のためには命をも投げ出す覚悟の兵士たちは世界各国に存在し、一説では3万人もいると言われる。現にフィリピンのデトゥルテ大統領の出身地ミンダナオ島では、マラウィ市でイスラム過激派集団と政府軍が衝突して、双方に300人以上の犠牲者が出ているとの情報もある。ISから遠く離れたテロに関しては、未だに油断できない状況にある。
ISが誕生した背景は、決してシリア政府と反政府軍との内戦による混乱に乗じただけではない。ヨーロッパをはじめ先進諸国において、貧困や差別の深刻化により、若者を中心に不平不満が高まっていること。他者を理解しようとしない偏狭なナショナリズムや、文化宗教の台頭などを背景として、若者の流入や洗脳を許してしまったことも背景にある。
例え数ヶ月後にISが崩壊したとしても、テロとの戦いはなお続くことを覚悟して、手綱を緩めないことが肝要である。また一方で各国は、貧困や差別をなくすための、明確な政策立案と実行が求められる。