はじめのマイオピニオン - my opinion -
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「杞憂」ではない小惑星衝突

 先週月曜日、東京お台場にある科学未来館で、国際宇宙航行協会や日本スペースガード協会が主催する、「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス」という国際会議が、アジア地域で初めて開かれた。私も長年スペースガード協会の正会員をしていたため、会議の冒頭で歓迎の挨拶を行う光栄に浴した。

 会議の目的は将来の小惑星衝突による被害から地球や生命を守るため、小惑星の発見と軌道計算を行い、その対策を練ろうという、膨大な取り組みである。この活動はアメリカ、ヨーロッパが先行しており、日本をはじめアジアがやや手薄である。小惑星発見と軌道計算は、3地域の守備よいリレーによって迅速に行われるため、日本の果たす役割は大変大きい。

 今から6550万年前、白亜紀の終わりに、当時隆盛を誇っていた恐竜をはじめ多くの生物種が絶滅した。約7割の種が途絶えたと言う。同様な大量絶滅は、それ以外にも何回か発生していたことが明らかになっている。その原因は長年謎に包まれていた。

 しかし1980年に、アメリカの地質学者であるアルバレス親子が、大胆な仮説を発表した。直径10kmの小惑星がメキシコのユカタン半島に衝突して、巨大津波や大火災、巻き上げられた多量のチリが地球を覆い、太陽光の不足による植物の枯渇などで、大量絶滅が起こったというものだ。

 科学界ではにわかには信じられなかったが、その後1994年に我々の目の前で、木星表面にシューメーカー・レビー第9彗星が衝突して、その仮説が補強されることとなった。また小惑星衝突をテーマとした映画「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」がヒットして、多くの人々の関心事となった。

 また2013年2月には、ロシアのチェリャビンスク市郊外に、直径20m弱の隕石が落下し、その衝撃波が街中のガラスを悉く砕いて、負傷者が多数出るという事故が起きた。この程度の大きさの隕石は50年から100年に一度の頻度で落ちるが、100m、1kmともなると数千年、数万年に一度、10kmともなると数千万年に一度という、極めて稀な出来事になる。

 しかしひとたびこのことが発生すると、人類はもとより地球上のあらゆる生命に、壊滅的な打撃を与える。ある計算によると、一人の人間が一生のうちで飛行機事故で死ぬ確率と、小惑星衝突により死ぬ確率はほぼ同じであるとも言われる。だとすれば、飛行機事故防止のための費用と同じくらい、小惑星衝突回避のための費用をかけることに合理性がある。今はまだ後者の方が圧倒的に少ない。

 「杞憂」とは昔、中国の杞の国の民が、天が崩れてくるのではないかと、無用な心配をしたことに由来するが、小惑星衝突はまさにこの杞憂に該当する。無用な心配ではなく、我々は必要不可欠な心配と位置付け、対策を地道に進めなければならない。

[ 2017.05.22 ]