はじめのマイオピニオン - my opinion -
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EUの憂鬱

 昨年5月の英国の劇的な国民投票から、早くも一年が過ぎようとしている。ブレグジット決断以来、英国内やEUがそれぞれ調整を続けてきたが、いよいよ正式にEU離脱が今年3月29日に報告され、離脱交渉が開始された。英国内では何とか「皮一枚残して、有利な条件をEUに飲ませられないかとの希望もあったが、「いいとこ取り」は許されず、タフな交渉になりそうだ。

 またこのことをきっかけとして、 2014年9月に実施された、スコットランド独立の是非を問う国民投票。当時は独立不可との結果だったが、これをもう一回やれ、との声も現地で高まりつつある。なぜならスコットランド政府はEUとの連携を重視しており、このままではEUとの縁が切れてしまうからだ。注視していく必要があるだろう。

 一方、独と並びEUのチャーターメンバーである仏の大統領選挙が4月23日実施された。主な候補はアンマルシェ!という革新的中道政党を引っ張るマクロン、極右の国民戦線ルペン、共和党のフィヨン、そして左翼党のメランションである。左右両極候補者が反EUを唱え、中道右派が親EUを唱えて来た。

 結果は4候補とも接戦だったが、マクロン24.01%、ルペン21.30%、フィヨン20.01%、メラション19.58%の得票率だった。過半数の得票率を超えた候補がいないため、決戦投票が上位2名で5月7日に実施される。

 フィヨン候補やその他の保守中道候補が、自分の支持者に対してマクロンに投票するよう呼びかけたため、マクロンの優勢が伝えられて、EU関係者や市場は安堵した。しかしルペン候補が国民戦線代表を辞めると、捨て身の戦術に出て周囲を驚かせた。極右のイメージを払拭したいのだろうか?

 仏・独が核となって、ECSC、EEC、EC、EUと、一貫して加盟国が拡大して来たが、英国の離脱で初めて加盟国が減少した。仏のEU離脱は回避される公算だが、独の総選挙の結果次第では、メルケル首相の退陣も考えられ、今後も離脱ドミノが起こらないとも限らない。

 EUが目指した域内の物や資本の移動、人の移動が実現し、その経済効果は一定程度上がっているものの、一方で移民労働力が自国の雇用を奪ったり、治安の悪化を招いている。さらにはおびただしい「EU指令」により、各国の特徴や伝統文化が薄れ、アイデンティティの喪失が懸念される。

 EU離脱ドミノを防ぐためには、EU指令の厳しい基準や強制力を和らげるとともに、その原因とも言える官僚体質をあらためる必要があるのではないだろうか。

[ 2017.05.01 ]