去る3月27日朝9時03分、甲子園球場では春の選抜高校野球、作新学院高校対秀岳館高校の第2回戦開始のサイレンが、けたたましく響いていた。恐らくその30分前、栃木県那須町の那須ファミリースキー場では大規模な表層雪崩が発生し、春山訓練をしていた県立大田原高校生7名と、教員1名の命が絶たれた。
同じ栃木県内の高校生が、離れた地でこうもくっきりと明暗を分けようとは、予想だにしなかったことであり、天を恨まずにはいられない。犠牲となられた高校生と先生に対し、心からの哀悼を表するとともに、怪我をされた多くの方々へのお見舞いを申し上げる。
報道にもあるとおり、この度の「春山登山講習会」は栃木県高校体育連盟が主催だが、具体的には登山専門部の専門委員会が全てを取り仕切り、毎年この時期に開催して30年になるという。講習会の最終日は那須の茶臼岳に登る予定だったが、夜半からの大雪のためそれを諦め、ゲレンデ周辺のラッセル訓練に切り替えたという。そこを雪崩が襲ったのである。
季節外れの大雪で、予期せぬ自然の猛威だった、不可抗力だったと片付けることは出来ない。登山がベテランの教員数名が合議の上、ラッセル訓練を実施したとするが、現実は「冬山」なのに「春山」という名の下に油断があったのではないか?「ファミリースキー場」という名称から安心しきっていたのではないか?過去に一度も事故が起きなかったからと言って、甘く見ていたのではないか?など、様々な疑問と疑念が首をもたげてくるが、これらは「後知恵」の類いであり、県教委が設置する検証委員会と、栃木県警の業務上過失致死傷罪を視野に入れた捜査により、徹底的に原因解明をし、再発防止に繋げることが肝要だ。
我々作新学院高校は、私学ではあるが栃木県高校体育連盟に所属し、多くの部活が強化指定を受けている。切っても切れない関係にあり、今回の惨事は決して他人事とは思えないのである。山岳専門部はもとより高体連挙げて、調査と捜査に全面的に協力すべきである。そして完璧な再発防止策に結びつけることが、犠牲者たちへの唯一の供養ではないだろうか。