企業や団体が行う様々な活動において、内部の構成員が知り得た事実であって、国民の生命、身体、財産に害を及ぼす事柄を、組織内の窓口や行政機関、警察、マスコミなどに通報したために、解雇などの不利益を被ることのないように、通報者を保護するための法律。これが平成16年にスタートした「公益通報者保護法」である。
冒頭から理屈ぽい話しになってしまったが、要するに「内部告発」を隠蔽せずに、公共の利益のために扱うための制度である。消費者庁がスタートしてからは同庁の所管となった。法施行から5年後に見直しを図ることになっていたが、実態把握が遅れるなどして、ようやく政府内で検討が進められている。
見直しの目的は、この制度の実効性を如何にして高めるかということである。正直、公益通報者保護法が効力を発揮して、事故や事件が未然に防げたという事例が極めて少ない。タカタのエアバック問題、三菱自動車の燃費表示偽装問題など、事態が発覚するまで長い時間がかかっている。
実効性が上がるようにするには、幾つかの改善が必要である。まずは行政機関にも企業側にも、内部通報を受けやすいようなガイドラインを策定させること。しかしより重要なことは、法律改正をしっかり行い、通報者の保護を確実にすることである。
具体的な項目として次のことが考えられる。まず保護される対象者に、これまでは「労働者」のみが規定されていたが、役員や当該事業の取引業者まで含めることである。企業内部の不都合が、より多く発見される可能性がある。
次に、対象事実としては、これまで国民の生命、財産、身体の保護に関わる法律にまつわる事実だけだったが、もう少し範囲を広げるかどうか。また外部通報の要件として、これまでは真実相当性を厳格に挙げていたが、これを緩和すべきかどうかである。
さらには通報者が不利益を被ってしまった場合、その回復をこれまでは民事ルールで行ってきたが、今後は行政措置の対象とするか、刑事罰まで発動させることが可能かどうか、慎重に検討することとなる。
消費者庁の役割は消費者被害を根絶するとともに、健全で活発な消費行動を促し、日本経済の発展に寄与することにある。今回の公益通報者保護制度の見直し強化も、この文脈でしっかりと進める必要があり、自民党消費者問題調査会長の私としても、積極的に関与して行きたい。