宇宙探査と宇宙利用という分野は、本来密接で不可分な関係にある。探査は、宇宙は未知の世界として捉え、科学研究の対象として様々な角度から分析検証を行い、新たな事実や理論、法則を見出すことを目的としている。
宇宙利用は、探査で得られた知見を使って、我々の生活やビジネスに役立つ道具や手段を提供するものだ。気象衛星による観測、衛星放送、GPSによる位置情報、資源衛星や偵察衛星などによる分析など、枚挙に暇がない。
ところで昨今は、宇宙利用の分野は比較的順調に進んでいるが、宇宙探査の分野は様々な障害にぶち当たっている。JAXAが手掛けた小惑星探査では、イトカワに到達した「はやぶさ」がエンジンや通信装置の故障により、長い間行方不明になった。丹念に探し出して、ようやく地球に帰還させたことが美談となっているが、誤解を恐れないで言えば、本来は故障してはいけなかったのである。
最近でも金星探査機「あかつき」が、金星周回軌道への投入を失敗し、5年後にようやく再チャレンジして成功させた。ただ5年という時間ロスとともに、燃料不足や機器の劣化のため、当初期待していた観測レベルが保てるかどうか危ぶまれている。X線天文衛星「ひとみ」に至っては、機器の一部が分離してしまった可能性があり、観測不能になる恐れが濃厚だ。
宇宙利用の分野では国民生活へのインパクトが強く、またビジネス的にも十分にペイするため、その投資額は巨大になる。一方宇宙探査は、前述したような例を挙げるまでもなく、元々リスクが大きく、生活やビジネスとは直結しない。予め何に役立つかは分かりづらく、結果が出てはじめて利用分野が分かるという性格を持つ。
したがって宇宙に関する政策を推進しようとする場合は、まず宇宙探査の分野にきちんと投資が回るように仕向け、仮に失敗してもめげない強靭さが必要になる。そうして宇宙探査をどんどん進めていかないと、やがては宇宙利用分野もジリ貧になることは、火を見るよりも明らかである。