今から10年ほど前に、食品偽装やリコール隠しなど、消費者の安全・安心を損なう企業不祥事が続発した。そこで政府は、事業者内部からの通報を行った公益通報者の保護を図り、行政が適切に対処するための、「公益通報者保護法」を施行した。しかし最近でも、廃棄すべき食材の使い回しや三菱自動車の燃費偽装など、同法の実効性がうまく機能していないことは残念である。
そこでこの度は消費者庁が中心となって、その実効性を高めるため、政府部内に検討会を立ち上げ、この夏に結論を出すことになった。検討項目としては、第一に民間事業者の取り組みの促進、第二に行政機関の取り組みの促進、第三に通報者保護の充実である。
第一は従業員の内部通報が安心して出来る制度を、企業が積極的に導入出来るようにすること。またそれを導入した企業が公的調達などで、きちんと評価される仕組みを作ることなどである。
第二は、通報を受けた行政機関が放置や不適切な調査、秘密の漏洩などを行わないこと。また各省庁の窓口とともに、地方自治体や消費者庁の窓口を設置することである。
第三は、通報者の範囲を現職従業員のみならず、退職者や取引業者にまで広げることや、通報による解雇無効を民事的に対応するだけでなく、刑事的あるいは行政措置として対応することなどである。
公益通報者保護制度は、民間企業の活動を萎縮するのではないかとして、導入時点では異論も多かったが、最近では企業コンプライアンスの意識も高まりつつあり、むしろこのような制度を積極的に導入していることが、企業側にとってもメリットが大きいと認知されるようになった。ここはもう一歩踏み込んで制度充実のために努力すべきである。