昨年6月英国で、EU残留か離脱かをめぐる国民投票が実施され、事前の予想に反して、離脱派が僅差で勝ってしまった。その後英国内では、何とか半分でもEUに残る道はないものかと、修正の動きも模索されていたが、先日のメイ首相の会見では「完全な離脱」が宣言され、その動きも封殺された。
さらにはこの動きと同期するように、昨年秋トランプ氏がアメリカ大統領選挙に、まさかの勝利を獲得したが、大統領就任前の記者会見では、「EU離脱はイギリスにとって素晴らしい選択だ。」と評価し、他のEU諸国にも離脱の勧めを説く始末である。
EUは第二次大戦後、戦争の火種となっていた石炭・鉄鋼などの資源の取引ルールを決めたECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、それを経済全体に広めたEEC(欧州経済共同体)、経済分野に限らず多方面で連携を強めるEC(欧州共同体)、そして国家統合まで視野に入れたEU(欧州連合)と、徐々にレベルを上げてきた。
しかしこの理想は、グローバリズムを極端に進めることとなり、各国の政治行政を「EU指令」の名の下に従わせる構図を作ってしまった。各国の独自性や長所を捨てさせるところまで、強制力を持ってしまった。ブラッセルのEU本部には数千人の官僚が集結し、彼らの仕事を作るために指令が発せられる自体も生じた。まさに非生産的な官僚機構が出来上がったのである。
EU加盟各国はこれに少なからず嫌気を示しており、イタリアの五つ星運動、フランスの国民戦線、ドイツのAfDなど反EUの右派勢力が、今後台頭する可能性を強めている。EU離脱のモメントは難民受け入れ懸念だけではないのだ。
しかしながら自由貿易のメリットは、各国のコストを低減し、恩恵を受けることは間違いない。極端なグローバリズムもいけないが、また極端な保護主義は世界経済を矮小化してしまう。我が国は貿易立国であり、秩序あるグローバリズムの恩恵を受けて今日の地位を築いてきた。
今後我が国は国際強調主義を掲げて、世界の中で大いに気を吐かなければならない。