今から9年前の国会は、「消えた年金」問題で当時の野党民主党が安倍政権を揺さぶり続け、その後の民主党政権誕生のきっかけを作った経緯がある。年金問題はそれだけに慎重な扱いが求められる。
そうした中、今回の年金改革は野党が「年金カット法案」と位置付けて、反対キャンペーンを展開する一方、政府与党は「将来年金確保法案」と命名して、真っ向から対決している。既に衆議院は与党などの賛成で可決したが、現在は参議院で審議が始まったばかりである。
改革の内容は大きく2つある。一つは年金受給水準の賃金スライドを強化すること。もう一つは将来の年金確保を目指したマクロ経済スライドの導入である。
賃金スライドの強化とは、物価に比べ賃金が名目でも実質でも低下する場合は、賃金の変化に合わせて年金額を改定するルールに変えることである。これまでは賃金が下がってもほとんど年金額を抑制しなかったが、そのため年金の原資が目減りしてきた。今後は将来世代の年金支給が確保されるように、現在の年金額を抑制する必要がある。
マクロ経済スライドとは、寿命の伸びや人口の減少を勘案して、年金水準の伸びを調整するという仕組みである。これも将来世代の年金を確保する効果を狙ったものだ。賃金スライドの強化も、マクロ経済スライドの導入も「将来年金確保法案」の名にふさわしい。
一方で低年金や低所得の方々に対しては、新たに「福祉的な給付」(最大年6万円)を導入する他、年金受給者に配慮して、前年度より年金額を下げる調整までは行わない措置(名目下限措置)を取ることとしている。