はじめのマイオピニオン - my opinion -
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国立劇場の今後について

 日本舞踊や邦楽、文楽、人形浄瑠璃、歌舞伎など、我が国の伝統芸能の中心施設として親しまれた国立劇場が閉鎖されてから、はや1年半が過ぎようとしている。施設設備の老朽化と集客能力の低下により、建て替えの計画がスタートしたためである。

 文化庁は、国費のみで建て替えることは難しく、民間活力も取り入れたいわゆるPFI方式の活用という考えで、過去2回入札を行ったが、いずれも入札不調になった。建設コストを賄えるだけの事業収入が見込めないのかもしれない。ましてや現在の資材高に加えイラン情勢による石油高騰で、この4月から始まった3回目の入札も危ぶまれる状況だ。

 現在の国立劇場は伝統的な校倉づくりをモチーフとして、多くの人々に親しまれてきたが、PFIとなるとホテルや商業テナントを併設したり、高層のビルになる可能性が高く、果たしてその名に相応しい施設になるかどうか、私は従来から疑問を抱いていた。「国立」の看板をおろさないのだとしたら、大宗を国費で賄うという基本的な考えに立ち戻るべきではないかと思う。

 また全面建て替えではなく、耐震補強や設備の大幅改修によって、今のデザインやコンセプトを残すというアイデアもあるのではなかろうか。走り出したら後戻りできないという役所の性もあるが、この案件に限っては、立ち止まることも正解だと心得るべきではないか。

 国立劇場が使えないと、伝統芸能の発表の場所が限られてしまう。確かに都内には多くのホールや劇場があるが、伝統芸能にはまわり舞台やせりなど、特別な設備や装置を必要とするものが少なくない。国立劇場でしか果たせない出し物もあるし、そこで働いていた人々が積み上げてきた、独特の雰囲気や環境も捨てられないものだ。

 しかもいつまで待てばそのような場が叶うのか、見通しが全く立たず、伝統芸能の質の低下や後継者が育たないといった、のっぴきならない事態も発生しつつある。建て替えの見通しがつかないのであれば、劇場の安全な場所だけでも一部開放して欲しいという、斯界からの切実な声も聞こえてくる。

 日本の文化予算はGDPのわずか0.11%である。フランスのそれは0.44%、韓国でも0.34%である。これでは世界から笑われてしまう。国立劇場はその名に相応しく、国の責任によって整備されるべきであり、文化立国に相応しい文化予算の大幅増額につなげるべきである。

[ 2026.05.04 ]