はじめのマイオピニオン - my opinion -
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政府高官の核保有発言について

 先日の報道によると、安全保障を担当する官邸筋の人物が、「個人的見解だが、我が国は核を持つべきと考える。自分たちを守れるのは自分たちだけだ。」という趣旨の発言をしたと伝えられた。これに対して野党党首は一斉に反発し、その人物(以下、同人という)の辞任・解任を求めている。同僚の中谷元議員や岩屋議員をはじめ、与党議員からもケジメを付けるべきという意見が出ている。

 私もそれに同調するが、その理由を述べたい。

 まず個人的見解と前置きしたり、オフレコの場での発言であっても、国家の安全保障を担当する政府高官であれば、限りなく公の発言と受け取られてもやむを得ない状況であり、同人の言動は極めて軽率であったと思う。またマスコミとの接触は慣れているはずの同人であり、どのような前提条件を付けたとしても、一部分を切り取られることは分かっていたはずであり、確信犯とも受け止められる。

 次に、通常兵器をどんなに積み増したとしても、核兵器はそれを遥かに上回る破壊力があり、相対的に安上がりで効率的な兵器だという考え方があることは承知しているが、我が国は世界で唯一の核被爆国であり、広島・長崎の原爆による極めて悲惨で永く続く災禍を、我々は一時も忘れてはならない。国是である非核三原則の立場や、NPT条約の趣旨を推進する立場を考えると、核保有という選択肢は絶対に選ぶべきではない。

 また事実上アメリカが保有する核兵器の傘のもとにある日本が、独自の核を持つということは、日米の同盟関係をリセットすることにつながる。戦後80年、日本の国際的立場を規定してきたサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約を、根底から見直さざるを得なくなる。その覚悟を同人がきちんと持ち合わせているかは疑わしい。

 なお現高市内閣は来年、かつての防衛三文書を見直す予定にしているが、非核三原則のうちの「持ち込ませず」が議論の俎上に載せることも検討している。見直しの議論を冷静にすることは認めるが、仮に同人がこの議論に布石を打つつもりで発言したとすれば、議論をミスリードしてしまった。冷静な議論を封じてしまった罪は大きい。

 永田町では「オフレコ破りをしたマスコミもやりすぎではないか」という発言も散見されるが、例え個人的な考えとはいえ、国家の安全保障政策を司る高官であり、高市総理の政策決定に大きな影響力を与える立場を考えると、この事実を把握して国民に広く知らせなければならぬというジャーナリズムの良心としては、むしろ当然の行為ではないか。

 同人を今の立場に残留させ、高市総理の側に置くことは、政権全体のイメージを損なうばかりか、政権が目指す方向に対して国民の誤解を与えることになりかねない。速やかな総理の決断を求める。

[ 2025.12.22 ]