はじめのマイオピニオン - my opinion -
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ノーベル平和賞に値するのか?

 国連の機関に国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)という組織がある。いずれもオランダのハーグに所在し、時々取り違えられることがあるが、ICJは国家間の法律的紛争の解決や、国連安保理から要請された国際的紛争案件について勧告的意見を述べることを任務とする。一方ICCは特定の個人の戦争犯罪について、国際法に照らして判決を下すことを任務とする。

 現在ICJの所長は岩澤雄司さん、ICCの所長は赤根智子さんがそれぞれ勤めている。日本人がその両方の代表を務めているのは、大変誇らしく思う。

 ところがICCが今年2月にイスラエルのネタニヤフ首相に対し、ガザ地区への軍事作戦が度を越しているとして、戦争犯罪を根拠とした逮捕状を発したところ、アメリカのトランプ政権はICC職員のアメリカ国内資産の凍結や、同国への渡航禁止など、厳しい制裁措置を発動した。

 国際世論や国際法に基づいた、真っ当な司法判断にもかかわらず、トランプ大統領の行為は平和に対する挑戦とも受け取れる。また早期のウクライナ戦争の終結や、イスラエルとパレスチナの停戦交渉の仲介など、トランプ大統領の努力には一定の評価はあるだろうが、顕著な成果を得るまでには、至っていない。

 こうした中、先日開催された日米首脳会談では高市首相から、トランプ大統領を来年のノーベル平和賞に推薦するとの意向表明がなされたという。これでは赤根所長の立場は立つ瀬がなくなる。ましてや会談の後、大統領は核実験の再開を命じたとも報じられた。益々ノーベル平和賞から遠ざかっていくではないか。

 高市総理としてはトランプ大統領のご機嫌をとったつもりかもしれないが、その意向表明は国民世論からかけ離れていると思わなければならない。「世界の真ん中で光り輝く日本を目指す」のであれば、まずノーベル平和賞推薦を取り消すべきではないだろうか。

[ 2025.11.03 ]