刑事裁判に職業裁判官でない国民が参加する裁判員制度は、平成21年5月21日にスタートした。今年5月21日に15周年を迎えた。これまでに裁判員として裁判に参加した人数は12万人を超えたが、一方で指名されたが登録を拒否した人の割合は60%強に上るという。
裁判員制度とは、国民の皆さんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい、被告人が有罪かどうか、有罪の場合はどのような刑に処すかを、職業裁判官と評議をして評決を下すものだ。
参加した国民にとっては馴染みの薄い裁判制度を経験することにより、犯罪の実態を知り、リーガルマインドを高めてもらうこと。証拠に基づいて物事を論理的に表現することの大切さや、物事を一面からでなく、多角的に見ることの大切さも学べる。一方裁判官側のメリットは、一般の国民がどういう考え方や感覚で物事を見ているか、すなわち世間常識をよりよく知る機会となり、今後の裁判に活かせることができる。
しかし指名されても裁判員任命を拒否する割合が6割を超えている現状は、改善の余地を残している。やはり公判や評議の時間が長いため、職場の理解が得にくい。裁判員休暇を設けている企業も出てきたが、まだまだ少数である。死刑の判決を下さざるを得ない場合には、気持ちの整理がつかずに途中で離脱したり、最初からエントリーしないケースもあるという。
さらには裁判官と裁判員の評議などにおいて、裁判官が必要以上に関与して、裁判員の自由で率直な考え方を抑えてしまうケースもあるという。裁判官にとっては煩わしいこともあるだろうが、裁判員一人ひとりの考え方を尊重しつつ、望ましい結論に導く力量が求められる。
残念ながら国会議員は、裁判員の指名から除外されている。議員には応召義務があり、議案採決には出席しなければならないため、やむを得ないのだろう。しかし私はたまたま弾劾裁判長として、フルサイズの裁判、しかも特殊な裁判を経験して、物の見方が少し変わったように感じている。「人を裁く」ことの難しさを知った。
法曹資格を持つ国会議員は一定数いるが、多くは持っていない。我々が審議して成立させた法律が、司法のところでどう解釈され、どう適用され、どう結論されているかを、やはり一度は経験すべきではないだろうか。より良い裁判員制度になるように、さらなる努力を続けていきたい。