日銀は今月の政策決定会合で、長年続いたマイナス金利を解除して、17年ぶりの利上げを決定した。年率2%の物価上昇率の達成と、それを超える賃上げの実現がほぼ確実だと日銀が見なしたからだ。とは言え政策金利は0.0%から0.5%と、依然低金利に抑える姿勢も示した。日銀は今後の利上げには、なお慎重姿勢を続ける模様だ。
マイナス金利の解除にもかかわらず、為替市場はドル高・円安が止まらない。米FRBが利下げのテンポを遅くしており、日銀の利上げにもかかわらず金利差が容易には縮まらないだろうと、市場には見えてしまったからだ。日本は円安による、さらなる輸入インフレを警戒しなければならない。
異次元の金融緩和政策を続けてきた我が国の経済は、歪みを抱えている。弱い企業を救うことには役立ったが、一般的に言って企業の稼ぐ努力を弱めてしまった。企業経営に緊張感がなくなり、非採算部門を温存してしまった。ようやく「金利のある経済」「適温経済」の世界に戻って来た日本だが、この環境に経済全体が慣れるまでには、少し時間がかかるかもしれない。
利上げは経済の好循環を後押しする役割があるが、一方で幾つかの困難ももたらす。膨大な国債の利払いが増加して、年度予算を硬直化する恐れがある。変動金利型で借りている住宅ローンの返済でも負担が増える。これらには何らかの手当をしなければならない。
今後の利上げスケジュールについて植田総裁は、利上げ決定後の記者会見で、極めて緩和的な金融環境が当面続く」と解除後の記者会見で言及した。私の予想では、年に2回程度の小幅な利上げにとどまるのではと考える。その間日本経済は、少しづつ身体を「適温経済」に慣らしていく必要がある。