はじめのマイオピニオン - my opinion -
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宇宙エレベーターとは

 宇宙開発と言えば、国際宇宙ステーション(ISS)のミッションが最も注目されているが、約4ヶ月間滞在していた大西宇宙飛行士も昨日無事に帰還している。一方で、これまでにない全く新たな宇宙開発の手段が、少しずつ話題に上るようになってきた。

 それが「宇宙エレベーター」あるいは「軌道エレベーター」と言われるミッションである。地上3万6000キロの高さにある静止衛星から、蜘蛛の糸のように地上に向けてワイヤーを下ろし、地上や海上で繋ぎとめる。一方それだけでは、ワイヤーの重さで地上に落ちてしまうので、静止衛星から反対側に3万6000キロ以上のワイヤーを伸ばし、遠心力で衛星を安定させる。

 このワイヤーを伝ってクライマーと呼ばれるエレベーターを昇降させて、人員や物資を宇宙空間に運ぶという仕組みである。今までのロケットに比べてゆっくり上昇するため、特別な訓練をしないで多くの人間が利用できる。また初期費用はかかるが、そののちは低いコストで運営できるメリットがある。

 いいことづくめのシステムだが、今まで注目されなかったのは、多くの課題を抱えていたからだ。先ずはここで使うワイヤーは鋼鉄の10倍という強度が要求される。幸い日本の科学者とメーカーが、それに叶うカーボンナノチューブという素材を開発し、にわかに現実味を帯びてきた。さらには宇宙線や地磁気の影響をコントロールしたり、スペースデブリなど障害物との衝突を回避する方法も、研究が進んでいるという。

 ワイヤーの先端は、地球から約10万キロの彼方に到達しており、地球の引力を振り払える「第2宇宙速度」に達している。ここから火星やその他の惑星探査に出かける宇宙船を放つことは、極めて容易になる。しかしこのプロジェクトは一国で出来るものではない。コスト面以上に、建設や運用面の全てにおいて、国際的なルールを作ることが不可欠だからだ。

 宇宙エレベーターの議論は「出来るか、出来ないか?」の段階から、いよいよ「どうすれば出来るか?」の段階に来たのではないだろうか。

[ 2016.10.31 ]