ロシアがウクライナに侵攻してから1年が経過した。かつては短期で決着するという予測もあったが、現在では膠着状態に陥っている。この間、ウクライナの首都キーウを訪問したG7首脳は、昨年前半までに英独仏加が相次いで行い、EU委員長は今年の2月2日、そしてバイデン大統領は電撃的に2月20日に訪問して、世界を驚かせた。
その結果G7首脳の中で未だキーウを訪問していないのは、岸田総理だけとなった。しかも今年のG7議長国が日本であることから、総理周辺は益々焦っている。が、しかし国会の日程以上に、安全性の確保が高いハードルとなっている。ヨーロッパ各国はNATOの枠組みの中でルートの安全が保障され、アメリカは超大国同士の極秘裏の通告によって守られていた。日本は頼りになる安全装置を持っていない。同盟国アメリカに助けをを求める案件でもなかろう。
岸田総理はじめ総理官邸の焦りも分からないではないが、総理は既にゼレンスキー大統領とはG7オンライン会議で対話をしているし、ウクライナの現状についての情報は溢れるほどもたらされているため、敢えて危険を冒してまで訪問する必要性はないのではないか。体裁を整えるためだけの訪問は、多くの関係者に無用な負担をかけることになりかねない。
むしろその分のエネルギーは、我が国のウクライナへの支援のメニューを増やす検討をすることに使うべきではないか。既に武器輸出3原則の柔軟対応を打ち出してはいるが、ウクライナへの武器供与は、なお議論を尽くし、前向きに検討しなければならないだろう。
さらに我が国はG7で唯一のアジアの国であるのだから、ロシアと友好関係にある中国とは、対話のチャンネルを開けておく度量と智慧を持つべきである。先日発表された中国の仲裁案は、賛同できる部分はあまりないのだが、欧米のようにただ無碍に切り捨てるのではなく、その意図を注意深く読み取り、中露の間に楔を打ち込むきっかけとなったり、停戦や終結に向けての種になったりする可能性もゼロではない。
岸田総理がキーウに行かなくとも、日本は立派にG7の一員であり、G7の議長国としての資格を失うことは決してない。むしろアジア唯一の代表として、欧米諸国には真似が出来ないような独自の立場と発想によって、G7の議論をリードすることを目指すべきではないだろうか。