去る2月6日、マグニチュード7.8と7.5の地震が相次いで、トルコ南部と隣国シリア北部を襲った。この地域は断層帯が複数、しかも長く伸びているようで、典型的な断層地震と言える。2つの地震は震源がある程度離れているため、それぞれ別々の地震だが、1回目に誘発されて2回目が起こったことは明白だ。
最初の地震では断層が4メートルもずれており、1997年に発生し6000名以上が亡くなった、阪神淡路大震災のエネルギーの20倍とも言われている。これまでに4万人を超える死者を出しており、そのほとんどが家屋の倒壊による圧死と言われている。特に集合住宅倒壊の被害が目立ち、耐震対策をきちんと行っていなかったことが疑われる。
今後の調査により、原因が解明されることを期待したいが、被災地からの映像を見る限り、崩れたコンクリートに鉄筋があまり入っていなく、あっても細い鉄筋しか見当たらなかった。現地の伝統的な建築工法である、煉瓦を積み上げたようなやり方で、高層集合住宅を建設したのではないか。これらの建築に関わった業者や設計士などが、トルコ当局に拘束されたとの情報もある。
治安の悪化や厳しい寒さも手伝い、救出復旧活動もなかなか進まないと言われる。さらに深刻なのはシリア北部の被災地だ。この辺りは「アラブの春」に触発された反政府勢力の支配地域に当たり、アサド政権が救援活動を行う可能性はほぼゼロである。海外から直接支援を入れなければならず、外からの緊急援助隊を入れることに、政権側がようやく納得した。
今回の地震の被災地は、過去200年ほど大きな地震はなかったとされる。そのため耐震建築などに関心が及ばなかったと言われている。しかし明らかに大きな活断層が横たわっているのだから、いずれ大地震が襲うことは容易に分かっていたはずだ。
日本にとってもトルコは友好国であり、今後も官民合わせて支援の手を差し伸べるべきだが、特に日本の強みでもある地震学の知見や耐震建築のノウハウを、惜しみなく提供すべきである。