選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから、初めての国政選挙が去る7月の参議院選挙だった。これは平成19年に成立した憲法改正国民投票法に盛り込まれた、投票権年齢18歳以上に合わせるための措置である。いずれも憲法審査会において与野党間で話し合われた結果であり、座長役の私としては、大きな混乱なく選挙が施行されたことに安堵している。
しかし一方で選挙権年齢が下がったことに対応した措置、例えば高校生に対する主権者教育は、まだ始まったばかりで、多くの学校現場では戸惑いも見られる。昨年は文科省にお願いして急いで副教材を作成し、総務省予算で全国の高校に配布していただいたが、まだ十分に活用されているとは言い難い。主権者教育を実践しているNPO組織も生まれたが、その恩恵は拡大していない。
さらにここに来て法務省は、選挙権年齢が下がったのだから、民法における大人の年齢も18歳からにすべきであるとの法制審議会の答申に従い、来年の通常国会に民法改正案を提出するという。この二つの年齢を揃えることは至極当然のことなのだが、大人になれば一人で契約が出来、親権によって不適切な契約を取り消すことが出来なくなる。悪質な契約につかまる若者が増えるのではないかと、弁護士会や消費者団体からは不安の声が聞かれる。
「 18歳」の引き金を引いた私としては、主権者教育の充実と、悪質な契約などに引っかからないための消費者教育を、早急に整える責任を感じている。少年法の世界では18歳、19歳の若者を「年長少年」と呼ぶことがある。しかし民法が改正されると、この年齢層は「若年成人」と呼ぶことになるのかもしれない。
私はこの18歳から、大学を卒業する22、3歳位までを「若年成人」と位置付けて、彼らが経済上のトラブルに巻き込まれることなく、社会の構成員として、きちんと権利や義務を果たしてもらえるよう、育成のためのシステムを築きたいと考えている。少子化や人口減少という我が国の隘路を克服するためにも、極めて重要な課題でもあるから。