1月23日通常国会が開幕し、岸田総理の施政方針演説が衆参本会議で行われた。今後取り組むべき国の重要課題として、「異次元」「次元の違う」という形容詞を付けた子ども支援・少子化対策と、厳しさを増す安全保障環境を見据えた防衛費の大幅増額を掲げた。
防衛費は5年間で43兆円、初年度6.6兆円、完成年度10兆円強を見込む。中身の積み上げは十分ではないが、GDPの2%相当というNATO基準から言って、妥当な規模ではある。一方、この4月からこども家庭庁がスタートするが、令和5年度の子ども対策費は1.6兆円、少子化対策費は3.9兆円だが、今年6月に決定する骨太方針までには、さらに大幅に増額される予定である。
いずれも巨額の予算を必要としているが、その財源をめぐって既に自民党内では議論が熱ばんでおり、徹底した行財政改革や剰余金の活用、さもなくば増税か赤字国債発行か、意見が闘わされている。今後は予算委員会を中心に、国会でも議論が盛んになること必定である。
私は子ども・子育て支援、そして少子化対策に関わる費用は赤字国債を中心に賄うべきと考える。子ども支援は将来世代への投資で、モノが残るのだから、建設国債と同様の考え方をしても良いのではないか。人口減少の軽減、場合によっては人口増加という国の資産として残るのだから。
一方の防衛費増額は、今を生きる人々の責任、すなわち増税も加味して賄われるべきである。あってはならないことだが、一朝有事の際は国債を速やかに出せる状況にしておくことが望ましい。そのためにも平時においては、出来るだけ国債依存度を低くしておくことが肝要だ。また国債発行に頼る無秩序な戦費調達が、如何に悲惨な結果を招いたかを想起すべきである。
税と国債の性格の違いから導かれる理屈を述べれば以上のようになるが、実際には政策遂行のスピードや安全保障環境の急変、税収の推移など、様々な要因によって左右され、理論的に綺麗に仕分け出来ないことは言うまでもない。しかし基本的には、この方向で議論が進めることが出来れば幸いである。