憲法14条の法のもとの平等規定により、公職選挙における一票の格差の是正が長年の課題となっている。過去の最高裁や高裁の判例により、容認できる格差はどんどん狭められてきた。現在は、衆議院で2倍以内、参議院選挙区で3倍以内となっている。それらを超えて選挙を行うと、違憲による選挙無効が提訴され、裁判所の判断が示される。
過去の判決を見るとかつては違憲であるが無効ではない、違憲状態にある、合憲だ、などと分かれてきたが最近は後二者が多くなっている。無効ではないにせよ、最高裁から違憲状態との判断が下されれば、国会は必死になって格差は是正に取り組まなければならなくなる。
今回の衆議院小選挙区の是正案は、政府の選挙区画定審議会が勧告したもので、10増10減案と言われる。選挙区の一票の格差を2倍以内に収めるため、東京で5、神奈川で2、埼玉・千葉・愛知でそれぞれ1増やす、一方で宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県で1ずつ減らす。このほか比例代表の定数も、東京ブロックで2、南関東ブロックで1増やす一方、東北・北陸信越・中国の3つのブロックでは、1ずつ減らす。
東京一極集中や大都市圏への人口集積をそのまま反映した形の10増10減案は、選挙区が減らされる地方の反発ばかりでなく、都市部でも選挙区増加が区割りの変更をもたらす。特に自民党は地方にも有力議員が多く、減員区での候補者調整に苦労する。
しかし人口比例でなければ何を基準として定数配分するのか、未だ意見が集約されない。過去の判例を覆すことは論外だし、土地の面積を加味することや、中選挙区制に戻すというのも非現実的である。
議員定数を増やせば、減員することなく格差是正は出来る。しかしそれは行革に反し税金の無駄遣いにつながり、国民の理解を得ることは出来ない。数年前に参議院の違憲状態を解消するために、定員を6人増やすことで済ませてしまったが、私はこれに賛成出来ず、1人採決を棄権して党の処分を受けた。今回の是正案も増員なら楽だが、歯を食いしばってこれを進めなければならない。
今回の区割り案では行政区分を極力反映させることも課題となり、選挙区数に変更のない県でも線引きの見直しが行われる。私が選出されている栃木1区でも、下野市の3分の1の旧南河内町が、下野市の他の多くが所属する栃木4区に吸収されることになった。これまで40年以上にわたり応援していただいた有権者と別れることは断腸の思いだが、審議会という権威が決めたことには従わなければならない。