マイナンバーカード(以下マイナカードと略す)制度が2016年に導入されてから6年が経過した。しかし取得には一定の手間がかかるためなかなか普及せず、申請時にポイントがつく優遇策を2020年9月と22年6月に実施したものの、現在までにようやく国民の50%に達したところだ。
政府の目標は23年3月までに全ての国民にマイナカードを取得してもらうことだったが、いよいよお尻に火がついたため、河野太郎デジタル担当大臣は健康保険証をマイナカードに統合させ、保険証の発行をしないと発表した。
これは事実上マイナカードの取得義務化であり、世間では大騒ぎとなっている。そうは言っても政府は、カードを持たない人には保険証に代わる何かを発行するとしたが、詳細は不明であり役所間でも合意はできていない。保険料を払っているのに保険が使えないという事態は避けなければならない。
もちろん私は2016年の制度発足直後にマイナカードを取得しているが、多くの人々に利用してもらいたいと考える。一昨年のコロナ給付金の支給には時間がかかったが、皆んなが持っていれば瞬時に支給できたはずだ。しかし個人のデータが第三者に渡ってしまうのではないか、個人情報の保護が不十分ではないかと、不審を抱いて申請しない人も少なくないのが現実だ。
政府内には再来年末までにマイナカードと運転免許証を紐付けするという目標もあるが、河野大臣はその前倒しも検討すると述べた。しかし医療機関や警察の窓口で、読み取り機器などが普及していない現状を考えると、今回示された一連の施策について「前のめり」の印象は拭えない。
かつて我が国では「国民総背番号制」や「住基ネット」の導入が試みられたが、国民の間ではその都度拒否反応が示された。国や自治体により自分の情報が管理されたくないという国民感情が、根強く存在している証左である。
マイナカードと各種の個人データを紐付けすることは、行政事務の正確さと効率化を図るために極めて重要であることは論を俟たない。しかし個人情報の管理をきちんと行うことを説明したり、マイナカードと個人の様々なデータを紐付けすることがどのくらいメリットがあるかなどを、国民に丁寧に説明する機会がまだまだ少ないのではないか。