今年もまた、8月15日の終戦記念日を迎えた。77年という長い年月の経過を感じる。6日の広島原爆、9日の長崎原爆、そして15日と祈りが続き、偶然なのか旧盆とも重なる。マスメディアではしばらく、多くの終戦特集が組まれてきたが、15日を過ぎると急に減ってしまい、「祈りの8月」も終わりに近づく。
戦争の実体験をした方々のインタビューもあったが、その多くは90歳以上。戦争経験者がどんどん少なくなることは、寂しいが現実である。実際に体験はしなかったけれど、先人の経験を語り継ぐことは可能である。我々はその役割を積極的に果たして行かなければならない。
そうした中、今年の戦争特集で感心したことがあった。白黒写真のカラー化である。しかも当てずっぽうの色付けではなく、ある大学の研究室がAI技術を駆使して、出来るだけ確からしい色付けを試みたということだ。
耳で聞いただけでは大したことないと思っていたが、実物を見て驚いた。白黒とは比べ物にならないほど、生々しい光景が映し出されているではないか。大袈裟かもしれないが当時の人々の息遣いすら感じられるのである。
爆弾の破裂した場面が、白黒では真っ白になっていたが、カラーではオレンジ色の閃光がはっきりと映る。服の汚れも灰色から土の色に変換され、臨場感を増してくる。何よりも映された人々の顔色が肌色になり、そこに血の通った人間が存在していたことを、強く主張してくれる。
カラー化された戦争中の様々な写真の存在は、戦争体験者の語りを代弁するとまで言えなくても、補強する可能性を持っている。人間は忘れやすい動物であり、特に日本人は忘れやすい民族である。したがってこの写真は我々にとってとても大切なものである。