去る3月16日に東北地方を震度5強の地震が襲った。福島県にある広野、原町など12基の火力発電所が停止に追い込まれ、東北電力管内で15万戸、東京電力管内で200万戸が停電した。また6月30日には同様に、福島の勿来火力発電所が設備トラブルにより停止し、東電管内の電力需給逼迫が想定されたため、使用制限が要請された。
電力で思い出すのが、東日本大震災の直後実施された計画停電である。原発事故の影響も懸念される中、本当に生きた心地がしなかった。また数年前の胆振東部地震で震度7の激震の直後、北海道全域で2日間にわたり長時間の広域停電(ブラックアウト)が発生したことも記憶に新しい。
電力の需給が逼迫すると何故停電が起こるかといえば、交流の電気がその周波数(東日本50ヘルツ、西日本60ヘルツ)を保てなくなり、発電機そのものが故障したり、電気製品などへの悪影響が考えられ、電気を送れなくなるからである。
なぜ逼迫したかと言えば、今回は予想以上に早く梅雨明けとなり、猛暑日が続いて電力需要が急激に高まったこと。一方安全基準をクリアしつつも立地自治体の反対などで、原発の再稼働が遅れていることが一因だ。岸田総理は先日の記者会見で、当面9基の原発を動かして供給量の10%を賄いたいとしている。
さらに各地の火力発電所の設備がかなり老朽化し、修理しつつ稼働しているという綱渡りの状況だ。これに対して将来の電源として有望視されている太陽光や風力などの再生可能エネルギーだが、本来天候などにより発電量が不安定な上に、系統線への接続が心許ないことや、充電設備がまだまだ脆弱なため、なかなか主役になれないでいる。
ここ数年我が国の電力システムは、電力の自由化や発電と送電の分離など、民間の努力に任される割合が高くなっている。しかしそれがメリットを発揮するためには、電力の安定供給が大前提でなければならない。貴重な電源の確保のためには、ここ当面は国の一層の関与が求められている。