ウクライナ情勢が緊迫度を増す中、お隣の韓国では3月9日、5年に一度の大統領選挙が行われた。与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補と野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル。ソクヨル、ソニョルとも表記)候補の間で、激しい闘いが展開されたが、得票率0.6%というごく僅かな差で尹候補が競り勝った。一昨年のアメリカ大統領選挙での大接戦と、その後の混乱を想起したが、一部コロナ感染者や療養者の投票に杜撰な管理問題が提起されているものの、韓国では安定的に収まりそうである。
尹氏の正式な大統領就任は5月10日であり、
2ヶ月間の政権移行準備のため、前政権からの急激な変化は期待出来ないが、尹氏のこれまでの主張や当選後の会見を見る限り、文政権時代に冷え込んでしまった日韓関係を回復させるというメッセージに安堵している。韓日関係は未来志向で臨みたい、日米との安保協力をしっかり取り組みたい、北朝鮮に対しては毅然とした態度をとる、TPPには積極的に関与したいなど。
もちろん文政権時代に政治問題化した戦前の元徴用工問題では、日本企業の資産没収と現金化という判決の行方が宙に浮いたままだ。従軍慰安婦問題では、2015年の両国政府間の合意まで戻れるか、予断を許さない。韓国民の間でなお対日不信感が根深く残っているが、新政権のもとで改善の方向に向かうことは間違いないだろうし、期待しなければならない。
一方新政権が抱える国内問題は、まず「共に民主党」との調整である。これだけ接戦だったため融和は容易ではない。特に国務総理の国会同意を得るのが最初の関門だが、なかなか難しい。さらに最近の不動産価格の暴騰をどう抑えるかや、就職難で希望を持てない若者をどう勇気づけるかも大きな課題だ。日本は東アジアの安全保障のためだけでなく、アジア経済の牽引者としての役割を共に担うためにも、新政権を支える必要がある。また最初から要望を突きつけるのではなく、長い目で暖かく見守る態度も必要だ。