今年一月からスタートしたアメリカ大統領選、まずは民主、共和両党の予備選が8月までに完了した。両党とも本命がいないと言われながらも、民主はクリントン候補、共和はトランプ候補にようやく落ち着いたところだ。今後は本選挙のある11月まで、両氏の論戦対決が本格化する。
今回の大統領選は、予備選段階から混迷し、それだけに国内外から注目も浴びてきた。共和党では度重なるトランプ候補の暴言に振り回されたが、「強いアメリカを取り戻す」というアピールが国民の心をつかんだ。
最近はやや暴言に蓋をして、安全運転に心がけているようだが、「メキシコ国境に巨大な壁を作る」発言が尾を引き、和解を求めたメキシコ、中米訪問は失敗に終わったようだ。一時の勢いも薄れ、伸び悩みの感が強くなっている。
一方のクリントン候補は、これまでの政治経験から、安定感においては一歩リードしているが、サンダース候補との闘いでは苦戦し、新鮮味に欠ける嫌いがある。また私的メールを公用に使うという危機管理の甘さや、最近の健康問題が気になるところだ。
現状ではクリントンが「一歩リード」が大方の米メディアの見立てだが、今後のテレビ討論での両候補の出来映えが、結果に影響を及ぼす可能性が強い。J.F.ケネディとニクソンのテレビ討論では、周到に準備して若々しさを強調したケネディに対し、選挙戦の疲れを目の下の隈に残したニクソンが、予想に反して後塵を拝した事実は、余りにも有名である。
仮にトランプ候補が勝利した場合、アメリカの安全保障戦略が大きく変わることが懸念される。また「アメリカ、ファースト」、即ちモンロー主義に陥る危険性も指摘される。安全保障も含めた世界秩序維持のためには、クリントン候補が勝利する方が望ましい。
もちろんアメリカの大統領はアメリカ国民が決めることで、外部からとやかく言うことは慎むべきだ。しかし大統領選の結果は日本はもとより、世界に大きな影響を及ぼすので、指を咥えて見ているわけにはいかない。
我々が当面やるべきことは、あと半年の命のオバマ政権を「レームダック」として追いやるのではなく、同政権を強力に支持することによって、後継はクリントンしかいないという雰囲気を作ることではないだろうか。