今年の梅雨は平年より約2週間遅れて明けた。いよいよ本格的な夏の到来、子供たちばかりか大人も浮き浮きし出した。しかし今年は手放しで喜べない事情がある。なぜなら梅雨の間の総雨量が、北関東では例年の半分程度であり、利根川水系や鬼怒川水系のダム貯水量は平年の半分にも満たないからである。
少ないダムでは30%程度となっており、取水制限20%を続行中という。これは工業用水や農業用水に影響が出る状態であり、これを上回る制限になれば、家庭用の水道も出にくくなる状態である。にもかかわらず、該当地域の水道局や行政の節水呼びかけが、あまり目立たないのが気に掛かるところだ。
梅雨が明けてしまったのだから、後は夕立に期待をかけるしかないが、今回の少雨傾向は、エルニーニョ現象の影響が大きいと言われている。一般的に地球温暖化では、大気中の水蒸気量が増えるため、全体的には雨量が増えると言われているが、地域によっては多雨も少雨も出現するのは、やはりエルニーニョのせいなのか。九州や北陸、東北、北海道では既に多くの雨が降っているが、その一部でも関東で降って欲しいと言っても、そううまくいかないところが自然の難しさである。
私が子供の頃は、渇水が3、4年に一度は経験したと記憶している。最近滅多に来ないのは、まさに上流に出来たダムのおかげである。ダムは洪水調節機能と貯水の機能があり、下流域の治水には絶大な能力を発揮する。一方その建設には多額の費用と時間を要するだけでなく、山あいの村を水没させるなど、計り知れない苦労や悲劇があったことも忘れてはならない。
かつての民主党政権時代には、「脱ダム宣言」とか「コンクリートから人へ」など、耳障りの良いアジェンダが国民全体をミスリードし、物事の本質を見誤らせたことがあった。もちろん公共工事の無駄を排除することは大切だが、川が短く急峻という日本の河川の特徴を考慮すれば、我が国におけるダムの役割の重要性は、強調してもし過ぎることはない。
最近「ダム・オタク」とか「ダム女子」などという言葉が聞かれるようになった。ダムの巨大さや力強さ、工場のような内部構造などに惹かれる若者が増えたという。ならばいっそのこと、彼らに「ダム検定」を作ってもらったり、「ダム大使」に任命したりして、ダムの大切さやその役割の大きさを、大いに広めてもらいたいものだ。