我が国では医療関係者に続き、高齢者に対するコロナワクチン接種が立ち上がって来たところだが、欧米では集団免疫とも言えるレベルにまで接種率が高まり、そろそろ出口を探る動きが出て来た。ニューヨークの街角などでは、マスクなしで堂々と闊歩する市民の姿が報道され、まさにコロナの長いトンネルから解放された感があり、羨ましい限りだ。
しかしそれらの「ワクチン先進国」でも、変異株(イギリス、インド、ベトナムなど)が防げるのかどうか不明な点もあり、まだワクチンの2回目を打ち終えていない人々との間で、トラブルや新たな差別が発生する危険性もあり、手放しでは喜べない事情もあるようだ。我が国も接種が進んで行った場合直面する課題であり、今のうちから対策を練っておかなければならない。
世界の人々はこれまで1年以上にわたり、不自由な生活を強いられてきた。ワクチン接種の広がりにより、ようやく解放されることの高揚感が消費を急激に拡大させ、さまざまな物資の不足を招き、物価が一時的に上がる傾向が見受けられるようになった。また各国政府がコロナ対策で思い切った財政出動をしており、金融の緩和も手伝って、市場にはお金の量がダブつき気味である。これが投機に向かうと株高が進行する。
これらの弊害を防ぐためには中央銀行が金融引き締めを図り、市場で国債を購入するなどの「出口戦略」を実行に移す必要があるが、長い間の緊急事態で企業の体力が弱っている。性急な引き締め措置は彼らを更に疲弊させることとなるので、注意深く行わなければならない。ポストコロナの時代の経済を適切にコントロールすることにより、初めてコロナに勝ったと言えるのではないだろうか?