第三波とも言える新型コロナウィルスの感染拡大は留まるところを知らず、最近の全国の新規感染者は2500人を超え、東京では1日600人、全国の死者も40人を超えるペースである。明らかに第三波は第一、第二波を上回る勢いである。
こうした中でも Go To キャンペーンは継続中である。もちろん警戒レベル3に達した札幌市、大阪市発着のGo To トラベルは凍結しており、同じレベルの東京発着は65歳以上の高齢者と、糖尿病や心臓病などの基礎疾患のある人のみ凍結されている。感染状況からして、東京でも年齢や健康状態によらず、凍結するのが筋ではないだろうか。
Go To キャンペーンは第二波が収まりかけた9月頃は、レストランや旅館・ホテル、旅行業者にとって救世主のように歓迎され、また利用者にも喜ばれ、経済再生の切り札でもある。しかし第三波が顕著になった現在では、感染拡大を助長しているのではないかとの懸念を抱かざるを得ない。政府はGo To 由来の感染者が全国で250人程度と公表しているが、あくまで自己申告の数字であり、信頼できるものではない。東京大学医学部が発表した調査では、明らかにGo To で旅行した人の方が、そうでない人より感染率が高まっているという。
Go To キャンペーンの影響はそれにとどまらない。Go To キャンペーンを推奨するということは、人々が外出したり旅行したりすることに対して、政府がお墨付きを与えていることになる。コロナ分科会の提言を受けて、西村経済再生担当大臣が外出自粛の呼びかけをしているのとは、明らかに齟齬を来たす。
旭川市ではクラスターの発生などにより、医療崩壊が起きつつあるという。「医療崩壊」とは医者や看護師、医療資源の不足により、コロナ患者をケア出来なくなるばかりか、通常の医療行為も出来にくくなることを意味する。医療崩壊は旭川市ばかりでなく大阪や沖縄、そしてやがては東京でも発生する可能性は否定できない。全国の大学病院の調査では、コロナ禍の影響で手術数が例年より15%以上減っているとも報告されている。
このように全国の医師や看護師の多くがコロナのために疲弊しきっているが、学校の子どもたちも可哀想だ。コロナウィルス感染拡大の影響で、今春は3ヶ月にわたって臨時休校を余儀なくされ、厳しい練習の成果を披露するはずの全国大会などが軒並み中止の憂き目にあった。二度とこのようなことがあってはならないと、学校は厳戒態勢をとっている。確かにオンライン授業を俄かに始めて、かろうじて教育を止めることは防げたものの、子どもたちの喪失感を埋める手立てを知らない。
その一方で高齢者集団のツアー旅行をよく新幹線で見かける。若者が繁華街で騒いだり、中年の会社員が飲み屋で同僚と大声で談笑している光景が、マスメディアで連日放送されている。学校の子どもたちは、給食のときも対面ではなく、会話も慎み黙々と食べているのである。大人たちは子どもたちに顔向けできるのだろうか。
令和2年はコロナに始まり、コロナに終わることになりそうだ。しかし今年は終わっても、コロナが立ち去る様子は全くない。英米でようやくコロナワクチンが投与され始めたが、日本では来春以降に始まり、国民に広く行き渡るのは来夏以降になりそうである。なおしばらくは新型コロナウィルスと付き合わなければならないが、我々はもう一度感染防止の原点、基本に立ち返って、緊張を持って立ち向かわなければならない。経済再生が大切なことは言うまでもないのだが、今は感染防止、命を守る方が大切なのではないだろうか。