未だに猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、政府は60兆円に及ぶ補正予算を編成し、感染防止と経済再生策を、矢継ぎ早に打ち出した。その予算規模は大きかったものの、国民の不安や不満がなかなか解消されなかった。特別定額給付金や持続化給付金、家賃補助などでは、給付条件が厳しかったり手続きが複雑過ぎたりで、給付が遅れたことが不満の原因の一つだった。
このような事態を反省して、菅政権としては主要政策として、行政のデジタル化を掲げた。ICTに最も詳しい議員と言われる平井卓也氏をデジタル担当大臣に任命し、来年の「デジタル庁」発足を目指す。
現在各省庁におけるICT環境はベンダー志向になっており、相互互換がない。自治体が保有する電子データもフォームが不統一で、横の連携が取れない。河野太郎行革大臣は早速「ハンコ行政」の撤廃をぶち上げたが、印章店への補償を伴いながらそれを実施することは、時の流れであり大賛成である。
行政のデジタル化を進めるには、まずマイナンバーカードの普及が切り札である。現在の20%弱という低い普及率を早急に上げなければならないが、その方策としてマイナンバーカードと保険証や銀行口座、さらには免許証との紐つけが効果を発揮するだろう。
またデジタル化の必要性は行政分野に限らず、一般企業などでのテレワーク、医療分野での遠隔診療、さらには教育分野でのオンライン授業など、あらゆる分野にまたがっている。先進国の中でも取り組みが遅れているわけだから、キャッチアップのためにコロナ禍というピンチをチャンスに変えていかなければならない。
その一方で、無原則で無秩序なデジタル化は弊害も余計大きくなる。ネットを使って送り届けるコンテンツが貧弱であると、デジタル化する意味は薄れてしまうし、間違った情報を流せば世間を騒がせることになる。コンテンツの正確性やその質の高さに留意しなければならない。個人情報をどこまで保護しなければならないか、ルール作りも慎重に進めなければならない。
私が会長を務める自民党消費者問題調査会では、ネット通販における消費者トラブルの解決スキームや、出品者の信頼性向上などにおいて、GAFAと言われるデジタルプラットフォーマーがきちんとその責任を果たしてもらう仕組み作りを促したい。またBtoC(事業者対消費者)の取引ばかりでなく、メルカリなどCtoC(消費者同士)の取引のルール作りも急務と考えている。
我が国のデジタル化においては、「行け行けどんどん」の姿勢ばかりでなく、その影の部分を出来るだけ小さくする努力をきちんと行うことにより、バランスのとれた日本らしいデジタル化にしなければならない。