去る9月16日に首班指名され、17日にスタートした菅義偉内閣は、好調な滑り出しを見せた。緊急に実施されたマスコミ各社の世論調査では、内閣支持率が6割台半ばから7割台半ばという高さをマークした。新内閣に対してはよく「ご祝儀相場」は付き物だが、今回は特に高いものとなった。
その理由としては、安倍政権からの継承という安定感とともに、各種の規制緩和や縦割り行政の打破、デジタル改革への積極的態度など、目新しい政策への期待も影響している。さらには「雪深い秋田から東京に…」という出自や、世襲でない叩き上げが好感度を上げていると思われる。
しかし一方で森友・加計問題、公文書改竄に関する再調査を必要とする意見も、直近の世論調査で6割台と依然高い。国民の意識は健全だと思う。ところがこれまでのところ、新政権の再調査についての言及はほとんどないように思う。また安倍政権を基本的に継承するという菅内閣において、「安倍一強」と言われるほど行き過ぎた官邸主導をどのように修正するのか、ほとんど聞こえてこない。
また官僚の幹部人事を内閣人事局に集約させ、政務の官房副長官に兼務させた結果として、官僚の多くが国民ではなく、官邸を向いて仕事をし始め、忖度を始めてしまった状況を修正する気は無いのだろうか。「内閣の政策に従わない場合は、どんどん異動させる」という菅総理の言葉からは、どうもその気は読み取れそうにない。
我が国においてトップが代われば過去のことを不問に付すことは、往々にしてありうることだ。しかし今回の菅内閣は安倍内閣の継承であり、相似形である。であるならば、過去の負の遺産についても、新政権に対して厳しい目で見るのが、マスコミの責務ではないだろうか。忘れっぽい国民以上に、マスコミの「手のひら返し」の対応に疑問を感じるのは、私だけではあるまい。