去る8月28日、総理大臣として7年8ヶ月という歴代最長の在任期間をマークした直後の安倍総理が、突然辞意を表明された。かねてより健康不安が囁かれ、持病の再発が懸念されていたが、まさかこのタイミングで辞意というのは驚きだった。アベノミクスによる経済再生、外交でのリーダーシップの発揮など、7年8ヶ月の取り組みは特筆すべきものがあり、労いを申し上げたい。病気治療に専念していただきたい。
一方コロナ対策や米中摩擦の激化など、政治空白は一時も許されず、早速新総裁・総理を選ぶ手続きが始まった。自民党総裁選挙は規則により、国会議員票と、党員投票の結果を反映した同数の地方票との合計で争われる。しかし任期途中で総裁が欠けた時は、両院議員総会で国会議員だけの投票、あるいはそれに加え、各都道府県からの党員代表3名の投票で決めることができる。
党の執行部は現下のコロナ対応で党員投票の余裕がないとして、国会議員(394票)プラス地方代表3名(計141票)の簡易選挙を採用した。しかし私は長期政権の後でもあり、党員の意向を丁寧に聞くことが望ましいし、安倍総理も次が決まるまで責任持つというのだから、フルスペックの総裁選挙を実施すべきと主張した。国会議員だけで、あるいは派閥の論理だけで決めるのではないかとの、国民からの批判も寄せられている。せめて県連単位で党員の意見を聞く予備選挙を実施して、その結果を県連代表3名の投票行動に反映すべきと述べたが、実際そうなりつつあることで、少し安堵した。
後継総裁選びは思いの外早く進み、安倍政権の継続性やコロナ対策の即応性から、菅義偉官房長官に白羽の矢が立ち、細田、麻生、竹下、二階派が早々に支持を打ち出した。しかし私は残念ながら菅官房長官を支援することは出来ない。なぜなら菅政権は安倍政権の「相似形」だからである。2年前の総裁選でも白紙投票しており、今回もその相似形を推すことはできない。安倍政権はアベノミクスや外交面で評価のある一方、賃金が伸びないこと、格差が拡大したこと、森友・加計問題や河井問題など、いくつかの負の遺産を背負っている。これらを払拭して新しい局面を作らないと、国民の自民党に対する信頼は容易に回復できないと考えている。
しかし総裁選挙で「白紙投票というのは無責任だ」とのご批判も受けており、責任ある政治家としては他の誰かを推さなければならないと思っている。しかし現時点ではいずれにも決められず、その材料も出揃っていない。ムードや支配的空気に流されることなく、また過去のしがらみに拘泥せず、純粋に政策を見て、コロナ後の日本をまともな方向に引っ張っていける候補を推したい。我が儘だが、考慮する時間を少し与えていただきたい。