はじめのマイオピニオン - my opinion -
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コロナ禍に学ぶ~その2~

 新型コロナウイルスの感染を抑えるため、長く出されていた緊急事態宣言もようやく5月末に解除され、都道府県を跨いでの移動制限も6月19日に解除された。経済活動も次第に元のレベルに戻りつつあったが、東京で1日の新規感染者数が、7月に入って100人を超える事態となった。

 5月の連休中の数字に逆戻りした感があり、第2波ではないかと囁かれているが、政府は緊急事態の再宣言は今の所必要ないとする。しかし「接待を伴う飲食店」、いわゆる「夜の街」を中心にぶり返しているのは明らかであり、もう一度引き締めなければなるまい。

 ところで昨今はコロナ後を見据えた議論が活発になって来た。コロナ禍が我々に教えたものは、テレワークやオンライン授業、リモート診療などICTを介する活動である。当初は戸惑いもあったが、人と人が直接対面しなくても、相当なコミュニケーションは可能であることを経験した。今後はコロナとの付き合いの中で、ICT環境の整備や電子決済、電子政府の必要性が強く認識された。

 同時に我々は、人と人が直接対面して会話すること、議論すること、理解し合うことの大切さも、あらためて認識することが出来た。私はコロナ禍で外出が制限される中、カミュの『ペスト』を読んだ。北アフリカのとある都市が、ペストの流行により約1年間もロックアウトされたという小説だ。どのような方法でペストが克服されたかはあまり詳しく述べていないが、一方ペストの蔓延やロックアウトのために、人々の感情や考え方がどのように変化していったかが、文学的に表現されていて興味深かった。

 それは一言でいうと、ペスト禍の前に比べて多くの人々が自分の欲望を抑え、他人に対して優しくなったこと。さらには自然に対する恐ろしさや畏敬の念を抱くようになったことなどである。果たして今回のコロナを経験した後の人々の態度や考え方はどのように変化していくのだろうか。

 これまでも歴史が示すように、未知の感染症は自然界からもたらされるケースが多い。諸説あるが、今回の新型コロナウイルスはコウモリから人に憑ったとする説が有力である。コウモリを捉え、家畜に与えたり直接食すことは、人間が自然界に無理やり侵入することを意味する。

 人間が自分の欲望を満たすため、自然界に侵入し、自然を破壊することは、人類の歴史そのものである。昨今の自然破壊の典型は地球温暖化である。その結果世界各地で異常気象が多発し、風水害が激しくなるばかりである。影響はそれだけではなく、昔から存在する風土病が新たな国や地域に拡大している。

 地球温暖化の結果、病気を媒介するハエや蚊の生息地が拡大しているためである。ヒトスジシマカが媒介するデング熱、ハマダラカが媒介するリンパ系フィラリアなどは、かつての蔓延地域を抜け出し、人口密集の都会や温帯地域に勢力を拡大している。また海外での最近の研究では、温暖化のためにシベリアの永久凍土が溶けて、凍結していたトナカイの死骸から炭疽菌が再活性化し、付近の住民に被害を及ぼしているという。

 人間の果てしなき要望を満たすために自然界に侵入した結果として、我々は様々な未知のウイルスや病原体に晒される危険に遭遇する。今回の新型コロナウイルスは、その一例に過ぎない。人間が本来の人間らしい生活を享受したいのならば、自然を畏敬し、自然を守ることの大切さを、あらためて強く認識しなければならないだろう。

[ 2020.07.06 ]