猛威を振るっている新型コロナウイルスとの闘いは、まさに正念場を迎えている。週末の外出自粛など、一人ひとりがその行動に責任を持たなければならない状況だ。4月早々には、コロナ禍に対する大規模経済対策を取りまとめ、新年度の補正予算も成立させるべく、全力を尽くさなければならない。
周囲では都市封鎖(ロックダウン)の可能性も囁かれ、食品の買い占めに走る消費者も見受けられるが、冷静な対応、賢い対応を求めなければならない。今回述べる食品ロス削減対策は、この闘いの後に本格的に取り組むべき課題と認識している。
昨年10月に食品ロス削減推進法が施行され、その基本方針案が先日の関係閣僚会議で策定された。3月中の閣議決定を目指している。そこに示された食品ロス削減の意義とは、我が国の食糧自給率が
カロリーベースでわずか37%であるのに、その多くを外国から輸入して、しかも毎年600万トン以上を、まだ食べられるのに廃棄しているという恥ずかしい現状を是正することである。
またWFP(世界食糧計画)は、現在世界で飢餓の脅威に晒されている人が8億人にも上ると試算するが、我が国の食品ロス600万トンを単純に配布すれば、飢餓は一挙に解消するとも言われている。国連が目指しているSDGsの一つの指標である「つくる責任、つかう責任」を、我が国は全く果たしていないことになる。食品ロス削減とは、このような国際的な不名誉な立場を返上することである。
食品ロス削減のためには、消費者はもちろんのこと、食品の生産・製造・販売業者や国・地方自治体など、それぞれの立場の人々が我が事として、その役割をしっかり果たすことが重要である。次に具体的な取り組み例を述べてみたい。
まず消費者については、買い物の前に家にある食材をチェックして、買い過ぎないこと。定期的に冷蔵庫の中の在庫を確認すること。外食時は食べきれる量を注文し、もし残った場合は自己責任で持ち帰ること。宴会時は最初の30分と最後の10分は、きちんと食事をするという「3010運動」を推進することなどである。
一方事業者においては、規格外の農産物を廃棄しないで流通にのせること。
納品期限の1/3ルールなどの商慣習を見直すこと。賞味期限を年月までの表示に大括りして、廃棄される量を減らすこと。恵方巻やクリスマスケーキなど季節商品を予約販売にすること。外食での小盛りメニューを導入することなどである。
さらに作りすぎた場合には、フードバンクや子ども食堂などにスムーズに提供することで無駄をなくすことも大切である。食品ロスを減らすためには、我が国に古くから伝わる「もったいない」という考え方を思い起こし、皆が我が事としてきめ細かく、柔軟に取り組むことが大切である。