最近では徴用工訴訟問題、それ以前は従軍慰安婦問題、韓国海軍の自衛隊機へのレーダー照射問題、さらには我が国固有の領土である竹島の不法占拠など、日韓間における様々な問題がおり重なり、両国間の関係は戦後最悪の状態に陥っている。特に徴用工訴訟は、戦前の韓国や中国にあった日本企業で働いた韓国人に対して賃金が未払いだったり、奴隷のような扱いだったことに対する提訴である。
しかし1965年の日韓請求権協定により、日本政府からは3億ドルが韓国に支払われて、彼らの個人的な請求権も、国家としての請求権も消滅したはずである。従って韓国大法院の請求決定は国際的に認められるものではない。日本側には仲裁の手続きや、国際司法裁判所に提訴する権利を有するが、韓国側にこれに応じる気配はない。
1965年の日韓請求権協定は同年の日韓基本条約の一部とされたものだ。基本条約の国会での批准手続きは、北朝鮮とも同様の条約を結ぶべきとの当時の社会党の反発を招き、難航を極めた。衆議院本会議でも乱闘騒ぎとなり、最後は強行採決となったが、当時衆議院議長だった私の祖父は、この責任を取り辞任している。これらの経緯を祖父から直接聞いていた私は、この条約に基づくその後の日韓関係の進展に、殊の外思い入れがある。だからこそこの度の韓国側の約束違反に対しては、先人たちの努力を無にする行為であり、殊更に憤りを感ぜざるを得ない。
しかしながら、その後の日本政府による半導体製造に欠かせない化学物質の優先輸出の変更、ホワイト国からの除外、それに対抗する韓国側のGSOMIAからの離脱決定など、お互いに報復とも受け止められる措置を乱発する状況を、非常に懸念している。この状況にほくそ笑んでるのは、北朝鮮であり中国であり、またロシアでもある。東アジアの安定にとって何のメリットもないのである。またいつこのような動きが収束するのか見当もつかない。取り返しのつかないところまで行ったら、それこそとんでもないことだ。
日本がとるべき対応は、まずこれ以上の報復と取れる措置を発動しないことだ。徴用工問題は決して折れてはいけない案件だが、これを言い続けることが肝心だ。韓国はかつての日本の植民地政策に、未だに怨みを抱いている。その国民感情をこれ以上刺激することは、両国の将来にとって決して望ましくない。ここは冷静に大人の対応が求められる。
もう一つは韓国国内の政治情勢をしっかりと観察して、適切な対応をとることだ、文在寅政権はこのところ支持率を下げており、改善の手段として強硬な反日政策を利用している。文政権のやり方に対して批判的な韓国人は少なくない。そういう人々に対して日本は理を尽くして説明すれば、理解してくれるはずだ。文在寅大統領は依然韓国大統領ではあるが、韓国の世論を代表してはいないと考えるべきだ。この時こそ民間交流を逆に盛んにして、政府対政府の非生産的な対立関係を、無意味な対立関係を帳消しにするくらいのことをやるべきだ。