資本主義経済を基本とする国々では好景気・不景気という「景気循環」が不可避である。政治や政府に課せられた責務は、この好景気をできる限り保つよう、様々な経済政策を実施することである。
日本は戦後何回かの景気循環を経験してきたが、景気拡大が2番目に長かったのは、1965年11月から70年7月までの4年8ヶ月、いわゆる「いざなぎ景気」である。また最も長かったのは、2002年2月から2009年3月までの6年1ヶ月、いわゆる「いざなみ景気」である。
ところで2012年12月から今日まで続いていると思われる景気拡大は、6年2ヶ月になろうとしており、戦後最長を記録しようとしている。政府による景気の「山」「谷」の判断は、あらゆるデータが出揃う約1年後になるので、今この時が山なのかもう少し後なのかは、しばらく経ってみないと分からない。
しかし戦後最長と言われても、国民の多くは好景気の印象は薄いと感じている。その原因の多くは経済成長率が、以前の好景気の時に比べて非常に低いことにある。50年前のいざなぎ景気の時は、平均実質成長率が11.5%、10数年前のいざなみ景気の時は1.6%だったものが、今回はわずか1.2%だからである。
さらに賃金上昇幅よりも年金などの保険料が上回り、可処分所得が目減りしていることも、景気回復を実感出来ない理由である。またここに来て米中貿易戦争のとばっちりを受けて、我が国経済の先行きに黄色信号が点ってしまった。今後は人口減少に伴うマイナス圧力が、次第に景気の脚を引っ張りはじめるだろう。
今後政治が目指すべきは、まだまだ克服されていないデフレマインドをなくすため、金融緩和政策を続行すること、国土強靭化などの財政支出を継続すること、企業の内部留保を生産性向上のために投資したり、所得分配率を上げたりすることである。