はじめのマイオピニオン - my opinion -
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ノーベル化学賞に硤合名誉教授

 湯川秀樹博士のノーベル賞物理学賞をはじめ、これまでに日本人あるいは日本に由来のある34人と1団体がノーベル賞を受賞し、この度は35人目のノーベル化学賞に東京理科大学の硤合憲三(そあい・けんそう)名誉教授が選ばれた。昨年、金属有機構造体(MOF)の発見で、化学賞を受賞した京都大学の北川進先生に続いての快挙である。
 国別の受賞者数はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスに続いて第5位で健闘しているが、アメリカは日本の10倍、フランスも2倍と、まだまだ壁は厚い。ただ2001年以後に限ると第3位となり、最近の伸びが著しいことは頼もしい限りだ。
 この度の硤合先生の業績は、生命の起源につながる貴重な成果と言われる。物質を形作る分子には、鏡に映した非対称の2つの形(左手と右手)が存在するが、生物界ではなぜか左手の形がほとんどを占める(ホモキラリティ)という。その左手のみを生成する技術(不斉自己触媒)を確立したことが受賞につながった。
 この技術は特に薬の製造に役立つという。製造過程で出来る左手の分子は、薬の効能を有しているが、右手の分子は効能を持たないどころか、毒を持つこともある。左手だけが製造されれば、画期的なコストダウンや効能のアップにつながる。
 硤合名誉教授の受賞直後から、同教授の人となりの報道に接した。飄々としたご性格の中にも学究肌の側面もお持ちであり、研究者としての模範を見る思いである。不斉自己触媒という現象は確かに応用科学の範疇になるが、なぜ左手型が多いのかという問いかけは、まさに基礎研究そのものである。
 私は以前より、我が国における基礎研究の力が弱まっていることに、警鐘を鳴らして来た。最近の自然科学におけるノーベル賞受賞の傾向は、応用や社会実装に資するものに傾いて来たが、まだまだ基礎研究の範疇が多数を占める。
 日本の研究の現状からすると、日本人のノーベル賞受賞者が、将来減ってしまうのではないかと懸念している。お陰様で今年の科学研究費補助金は、昨年の倍に増え、多くのレベルで基金化も実現して、使いやすくなった。硤合名誉教授の受賞を機に、さらに基礎研究の強化に力を尽くしたい。

[ 2026.10.12 ]