以前は防災の心得として「天災は忘れたころにやってくる」とか、「備えあれば憂いなし」という格言があったが、今や「天災は忘れないうちにやって来る」、「備えあっても憂うべし」という格言に変えなければならないほど、自然災害は頻発するようになった。
地球温暖化に伴う激甚で多発する水害はもとより、先日は東北北部から北海道にかけて、震度6強を含むM7.2の強い地震が襲った。心からお見舞い申し上げるが、東日本大震災の時のあの揺れを思い出した人も多いのではないか。しかも今回はこの地震の後に、大地震の起こる可能性が100回に1回の確率で起こるかも知れないという「後発地震注意情報」という、耳慣れない情報が気象庁から発せられた。
確かに2016年4月に発災した熊本地震では、M6.5の前震の30時間余りのち、M7.3の本震がほぼ同じ地域で起こっている。2024年正月にM7.6を記録した能登半島地震の際は、その半年前にほぼ同じ震源域でM6.5の強い地震が観測されており、注意するに越したことはないと言える。
かつて東海地震の予知ができるのではないかと騒がれ、精緻な観測網も敷かれたが、未だに発生はしていない。最近では南海トラフ地震との連動の可能性が指摘され、予知の関心が少し薄れたようだ。我が国の地震学は世界最高水準とは言いながら、正確な予知はなかなか実現しない。
2011年の東日本大震災以後、日本列島の地震は活動期に入ったとも言われる。地震に備えることは言うまでもなく大切だが、「備えがあっても、なお憂える」という心構えと対応が、防災庁の設置とともに望まれる。