高市内閣の目玉政策の一つに「責任ある積極財政」というのがある。緊縮財政でなく財政出動に重きを置くという趣旨なのだが、ここでいう「責任ある」というのは赤字国債に頼らず、財源をきちんと手当することなのか、プライマリーバランス(PB)を中期的に達成することなのか、判然としていない。説明をよく聞くとPBを年単位でなく、数年単位の中で目指そうということだ。
PBを無視して財政出動を続けることではないようだが、財政規律はかなり緩やかになるのではないか。もちろん目の前の物価高対策や税負担の軽減、医療機関の財政悪化に対する緊急支援など、国民生活の安心・安定を実現するための財政出動は避けて通れない。しかし同時に財政健全化にも目を配り、日本の円に対する内外の信認を繋ぎ止めることも、同様に重要なはずである。
更なる赤字国債を発行することは、将来世代にツケを回すという中長期的な話だけではなく、長期国債をはじめとして利率が上がる(価格が下がる)こととなり、保有資産の目減りから一部の銀行では黄色信号が灯りつつある。日本国債の引き受け手も減少してしまうだろう。
さらに高市総理は、アベノミクス以来の異次元の金融緩和の継続にコミットしており、内外の金利差による円安傾向の持続や加速が発生し、輸入物価の上昇が更なる国内物価高に繋がる危険がある。政府の積極的な物価対策が更なる物価高騰を招くという、悪循環に陥りかねない。
今後高市総内閣は、PBを意識した財政運営と、適切な金利ある世界に戻していくことを頭に入れるべきと、私は切に願っている。