去る10月21日誕生した高市内閣は、24日の衆参両院の本会議で、総理の所信表明演説にたどり着いた。参議院選挙以来3ヶ月近く事実上の政治空白を招いてしまったが、ようやく歯車が回転し始めたことには安堵している。この間国民生活の安定のための対策が滞っていたため、今後大車輪で政策実現に努めなければならない。
高市総理の所信表明演説には「世界の真ん中で咲き誇る日本を目指す」という、安倍元総理の演説を想起させるような言い回しが散見された。それだけに外交、安全保障、経済の分野で強い日本を作るという、前向きな印象を受けた。しかし一方ではそれを実現するための方策について、具体的な言及が、やや足りなかった感がある。
また高市総理は、これまで右寄りの言動が目立っていたが、今回の所信表明では少し抑え気味で、バランスを取っていたように思う。今後の代表質問や予算委員会などでの答弁をよく聞いて、あらためて吟味して行きたい。
ところで、演説が行われていた本会議場では、反対を明確にしている野党からのヤジも強かったが、一方で高市総理の演説のフレーズ毎に、我が自民党の若手の議員が、拍手ばかりでなく、「ウォー」という賛同の掛け声を響かせていた。与野党のヤジ合戦によって、折角の演説が聞き取りにくい場面もあった。
そういう彼らの気持ちも分からないではない。日本維新の会との連立を実現して、なお少数与党であるにも拘らず、数年来退潮傾向を示していた自民党が、長いトンネルを抜けて、ようやく攻勢に出ていけるという高揚感は、当然あっても不思議ではない。増してや高市総理という強力な覚悟を持ったリーダーが放つ言葉に、興奮を覚えることもあるのだろう。
もちろん若手の中にも、冷静に構えている議員もいるはずで、高揚している議員と同じ行動は出来ないはずだが、周囲の空気の圧力に飲み込まれてしまったかも知れない。いわゆる同調圧力という曲者である。この曲者が一杯溢れて、いつか来た道を辿ることのないように、議員一人ひとりが冷静さを失わないことが、今極めて大切なのではないだろうか。