トランプ大統領は就任早々のこの4月、アメリカと貿易関係のある各国に対し、いわゆる「相互関税」を課すことを突然発表した。最大50%から最小で10%で、それぞれの国との貿易赤字を反映させたものと言われ、日本には当初24%の追加関税が提示された。その後、その発動は90日間猶予されたが、ようやく 7月24日に15%に引き下げることが決まった。
ただし自動車にかかる個別関税25%の言及はなく、15%を超えることとなる品目の軽減措置も曖昧のままだった。これまで粘り強く米側と交渉してきた赤沢担当大臣は、9月に入り、なんと10回目の訪米に及び、かつて口頭で約束していた、5500億ドル(約80兆円)の日本からの融資の文書化と、自動車にかかる関税15%や軽減措置について、ようやく大統領令を発することに漕ぎつけた。
この間の赤沢大臣の血の滲むような努力と、政府担当者の献身的な努力に対して、心からの敬意と感謝を申し上げたい。また彼らを粘り強く指揮してきた石破総理の頑張りを高く評価したい。
とはいうものの、トランプ関税によって影響を受ける企業は数多く、特にアメリカ向け輸出を主に手がける中小企業にとっては15%でも重荷であり、彼らを支援する財政措置が不可欠である。またこれまで2.5%しかかせられていない自動車産業も、15%の重荷は相当な大きさである。自動車産業はとても裾野が広く、そこに部品を提供する企業の多くは中小である。きめ細かく支援措置を講ずるべきである。
現在、米国際緊急権限法に依拠したトランプ関税に対して、ワシントン連邦控訴裁判所は憲法違反の判断をした一審判決を支持した。今後もこれらを巡って法廷闘争が続くと思われるが、トランプ政権はこれを認めるどころか、ねじ伏せてしまうだろうことは、火を見るよりも明らかだ。
しかし再登板以来無理を押し通してきたトランプ政権も、不動産取引(ディール)のようには国際情勢も国内政治もうまくいかないことは、かなり理解しつつあるように見える。ウクライナ戦争におけるロシアの頑なな態度、習近平率いる中国のしたたかな外交戦略、日本やEUなどの同盟関係にある国々が、脅しに屈しないで国際秩序を維持しようと踏ん張っていることなど、彼の思うようには動かないことを、遅ればせながら学びつつあるようだ。我々はトランプ大統領やその政権に対して、彼らの思うように世界は、国々は動かないことを、スクラムを組んで示していかなければならない。