はじめのマイオピニオン - my opinion -
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戦後80年の首相メッセージについて

 8月6日の広島、9日の長崎、そして15日の終戦記念日は旧盆と重なり、まさに日本国中が祈りの季節となる。しかも今年は戦後80年という節目である。歴代総理大臣が10年毎に談話を発出してきた。最近では戦後70年の安倍元総理の談話があり、近隣諸国への明確なお詫びと、未来に向かって平和国家を目指す決意が述べられた。対外的にはほぼ完璧な談話であり、何も付け加える必要はないように思う。

 ただ戦後80年という新たな節目を迎えた石破総理としては、閣議決定による談話でなくとも、何らかのメッセージを発したいとの意向が強いと報じられている。歴代の総理談話にはなかったこと、即ちなぜ日本があの戦争が起こってしまったのか、起こさざるを得なかったのかという内省の視点である。

 石破総理の弁を聞いたわけではないが、当時、軍部の独走だけではなく、役所という役所が戦争を鼓舞したこと、それにつられたマス・メディアの大合唱、さらには国民一人ひとりの考え方や生き方など、戦争に向かう抗しがたい潮流があったのに違いない。このメカニズムを冷静に分析する先に、二度と戦争を起こさないための教訓を彼は明らかにしたいのかもしれない。

 私はかつて、猪瀬直樹氏が著した『昭和16年夏の敗戦』を、このオピニオンで紹介したことがある。当時の東條内閣の命により、各省から若手エリート官僚が選ばれ、詳細なシミュレーションを行った末に、日本はアメリカに完敗するという結論に至ったという史実である。

 ところが東條総理はこの結果を受け入れず、半年後に真珠湾攻撃を断行して、無謀な日米開戦に突入した。歴史に「もしも」はないが、もし東條が少しでもシミュレーションの結果を重んじていれば、最悪の結果をもたらさずに済んだかもしれない。

 防衛問題を誰よりも究めている石破総理には、是非太平洋戦争の客観的な総括と、そこから得られた教訓をもとに、地に足の着いた不戦の誓いを是非発してもらいたい。

[ 2025.08.15 ]