昔からアメリカでは大統領が交代した時、とりわけ異なる政党所属の大統領が就任した時、ポリティカル・アポイントメント(政治任用制度)という行政官の異動が大規模に行われる。異動する行政官は2千人とも3千人とも言われる。
大統領の考える政策が迅速に、明確に行われる可能性を高める一方、行政の継続性が損なわれたり、なかなかポストが決まらなかったりといった弊害も指摘されている。時の大統領の権限や権力を高める効果もあり、諸刃の剣でもある。
ところで「ワンマン」と呼ばれるトランプ大統領は、この制度をフルに利用して、その権力構造を強化し、実際に意のままの乱暴な政策を実行して来たことは、論を俟たない。最近ではFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長に対して、利下げの圧力をあからさまに掛け、交代も示唆する始末だ。本来は日銀と同様に、時の政府から離れた客観的立場で、経済動向を安定させる金利政策が求められる。
さらに先日のトランプ大統領は、雇用統計が恣意的であると決めつけ、労働省の担当局長を解任させてしまった。トランプ政権になって雇用統計が故意に下方修正されているとの疑いである。もちろん雇用統計をはじめ政府の各種統計は、客観的な数字を弾き出しているはずだ。この紛れもないエビデンスを信じようとしないトランプ大統領の横暴には、アメリカ国民ばかりでなく、世界の心ある人々が声を上げなければならない。