アメリカのトランプ政権は4月29日で、スタート以来100日目を迎えた。一般的にこの期間はマスメディアが攻撃しない、即ち「ハネムーン期間」と呼ばれているが、ハネムーンどころか、マスメディアは彼の発言や事実関係の確認に振り回されてばかりだ。
トランプ大統領はこれまでも様々な大統領令を連発し、既にCOPやWHOからの離脱、パナマ運河の国有化のちに無料化の宣言、グリーンランド買収提言など、およそ常識的でない言動に世界中が振り回されている。
各国の現在の関税に追加する「相互関税」は貿易赤字額をベースとして、50%から10%を設定しつつも90日間の猶予・交渉期間とした。中国とはハイパーと呼んでもいいような、高率関税による報復合戦を展開して、世界を震撼させている。
相互関税の目的は、製造業の米国内回帰と貿易赤字解消を同時に達成しようというものだが、それは一方で国内の景気後退、国内物価の高騰、株式市場や金融市場の混乱を招いており、米国民の政権に対する反発は、日増しに強くなってきている。一部の熱狂的な支持者を除き、なぜトランプを選んでしまったか、後悔している米国民も少なくない。
懸案のウクライナ戦争終結に向けての仲介作業は、遅れに遅れており、トランプ大統領は明らかに焦っている。これまでに明らかにしたトランプの停戦案は、クリミア半島のロシア帰属を認めるなど、かなりロシアに有利なものであり、ウクライナ側が簡単に乗ることは考えにくい。ウクライナの資源開発をめぐり、米・ウ両国はようやく調印に至ったが、停戦の確たる見通しはまだ立っていない。
トランプ政権が今後世界から是認されるためには、これまでの破天荒な言動を止めることや、これまでの過激な政策を以前の姿に戻すことが求められる。特に先の大戦の反省から生まれたブレトン・ウッズのような自由貿易体制は、これまで長いことアメリカが主導して来たが、今やその破壊者になりつつある。
このような事態を受け、日本はアメリカの保護主義転換という誤りを諭すばかりでなく、自由貿易を今後担っていく騎手としての役割を、積極的に演じていかなければならない。